久し振りの有給休暇(とは名ばかりのサボり)を愛しい彼女の元で過ごし、庭で昼食を共にしていた時、不意に彼女に投げかけられた質問。
「ねぇ、ゼロス?」
「はい。」
「ゼロスって怖い物あるの?」
「・・・」
一瞬答えに詰まったのは・・・が僕の顔を覗き込んだから。
太陽の光を受けて輝く眩しい彼女の瞳に映るのは、目を細めた僕の顔。
彼女の瞳を、心を占めているのが自分だけだという何とも言えない気持ちに気を取られた所為で、反応が遅れてしまった。
「あ、あるんだ!」
けれどそれをどう誤解したのか、彼女は驚いたような顔をして更に僕に詰め寄ってきた。
「魔族に怖い物はないと思ったけど・・・それって人?物?」
「あーちょっと待って下さい。」
「それとも食べ物?」
「・・・」
「リナさんとかじゃないよね?」
「ですから・・・」
「上司の人が怖い、って言うのはゼロスらしくないし・・・」
「・・・」
――― 一体僕はどんな風に思われてるんだか・・・
それでも一生懸命僕の事を考えてくれる彼女が可愛くて、わざと惚けた顔をして自らの顎に手を当てて首を傾げる。
「の言うコトがあってる・・・かもしれませんね。」
「え?何が?」
今まで言った中に正解があると思ったのか、一生懸命口にした言葉を思い出す。
僕と同じように顎に手を当てて、可愛らしい眉間に皺を寄せて・・・貴女を悩ませる僕が何だか悪い事をしているように思えてきましたよ。
「分かった!レイクドラゴン!!」
「そんな事言ったらリナさんに殺されちゃいますよ?勿体無いって。」
「あ、そっか・・・じゃぁ・・・えーっと・・・」
「そんなに難しい事じゃないと思いますよぉ?」
「・・・ゼロスには簡単でもあたしには難しいの。」
僅かに膨らませた頬を軽く指でつつくと彼女が作る、焼き立てのパンのような弾力が僕の指に伝わる。
そんな僕を少し拗ねたような上目遣いで見つめられて・・・思わず口元が緩んでしまった。
言葉じゃなく、動作ひとつで僕を動かせるのはだけですよ。
「教えて欲しいですか?」
「うん!」
即座に頷いたを見て、僕は顎に当てていた指先を口元へ持って行く。
つむぐ言葉は、彼女も良く聞くあの台詞。
「・・・それは、秘密です。」
「え〜っ!?」
「だって僕の弱点ですよ?そう簡単には教えられません。」
「気になるよ!」
「秘密、です。」
「ゼロスーっ!!」
僕のマントを掴んで引っ張るが可愛くて、これ以上黙っていられそうもない。
だから僕はわざと明るい声で、愛しい彼女に僕の秘密を解き放つ呪文を教えてあげた。
「が僕の事好きだって言ってくれれば、教えてあげます。」
「い、いつも言ってるじゃない!」
「それじゃぁ足りませんよ。僕の弱点なんですから・・・そうですね、1万回くらい言って貰いましょうか。」
「い、1万回!?」
口元へ当てていた指を、そのまま彼女の唇へ乗せる。
「・・・そうすれば、いつか教えてあげます。」
僕が何よりも恐れているのは、・・・貴女です。
他の人間なんてどうでもいい。
僕の命を狙う魔族も、関係ない。
そんなもの、全て打ち払ってしまえばいい。
だけど、貴女だけは・・・失えない。
今の僕は、を失う事が一番 ――― 怖い
それは秘密です
ひっ・・・さしぶりのゼロスです!
リクエストを貰わない限り書かないだろうなぁと思ってるクセに、いつの間にか妙に安定しているこの魔族と人間のカップル。
ゼロスの名言とも言えるこの台詞は話の中で必ず一回は使ってる気がしますね(苦笑)
それがお題になってどうしようと思いましたが、こんな風に使ってみました。
ちなみに指を唇に当てるって言う仕草、最近結構好きだという事に気づきました。
ちなみに1万回好きだと言ってもゼロスは惚けます。
「あれぇ、まだあと千回残ってますよ?」とか言って誤魔化します。
・・・そんなゼロスが大好きな自分(苦笑)
お題作成者:日向麻理さんへ
久し振りに書いたゼロスですが如何でしょうか?
相変わらず魔族の有休というありもしない設定を押し通してますが、バカップルな二人を楽しんで貰えれば嬉しく思います。
日の光の下が似合わないはずなのに、ゼロスは木の下でお昼寝とかも似合いそうな気がしませんか?(笑)
お題企画に参加して下さってありがとうございました!!