「や・・・やだ、三蔵・・・やっぱり、こんなの・・・」
「てめぇの方から言い出した事だろうが。」
「でもやっぱり・・・あっ・・・や・・・」
「・・・もう遅い。」
「あぁ〜・・・」
「問題ねぇだろうが。」
「うわぁ〜〜〜んっ!本当にラーメンにマヨネーズ入れたーっっ!!」
本日の昼食は、悟浄の作ったごった煮ラーメンinマヨネーズに決定。
「うわあぁぁ・・・」
「煩い奴だな。」
「だって、だってホントに入れたっ!!」
「てめぇが入れろって言ったんだろうが!!」
「入れてみようかなぁ〜って言っただけだもん!」
「言ってるじゃねぇか!」
「まぁまぁ二人とも、落ち着いて下さい。」
苦笑しながら喧嘩の仲裁に入った八戒に半分泣きながら三蔵を指差す。
「八戒!あたし入れてって言ってないよね?」
「・・・ですが、曖昧な事を言ってしまったのは事実ですし。」
「あ、でもさ!混ぜれば分かんねぇんじゃん?」
隣に座っていた悟空が助け舟を出すかのように、ごった煮ラーメンinマヨネーズを混ぜてくれた。
だけど、それが余計・・・あたしの食欲を無くさせる物となってしまった。
「・・・あたしの、ご飯。」
「ふん、黙って食え。」
「ご、ごめん。」
「良く言えば豚骨ラーメンに見えなくもない・・・んですが、これはちょっと・・・」
「・・・っていうか、悟浄のラーメンが既に食欲無くさせる気がすんの俺だけ?」
「正しい判断です、悟空。」
確かに冷蔵庫の中身を適当に鍋にぶち込んで煮込んだラーメンで、見た目は悪いけどお野菜いっぱいのラーメンだって思って食べようとしたのに・・・三蔵がマヨネーズ一本全部ぶち込むからこんな事になっちゃったんじゃん!!
――― 食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ!!
キッと隣の席の三蔵を睨むと、何も言わずラーメンを目の前に置いて箸を差し出した。
「・・・何だ。」
「・・・」
「・・・食えとか言うんじゃねぇだろうな。」
それ以外、何を言ってると思う!!
お腹を空かせていた所に、こんな事をされた今のあたしに怖いものはない。
普段ならすぐに目をそらしてしまう三蔵の眼光も正面から受け止め、逆に睨み返す。
その様子を声もかけられず眺めていた八戒と悟空。
妙に緊迫した空気が居間に広がっていたけれど、そんな中、不意に肩を叩く手があった。
親の敵でも睨みつけるかのようなキツイ目で肩を叩いた主を振り返れば、そこにいたのはごった煮ラーメンを作ってくれた悟浄だった。
「どったのチャン、ンな怖い顔して。」
「ご・・・ごじょぉ〜・・・」
「約束の時間間違えたから一服しに戻ったら妙に険悪な雰囲気で、八戒も何も言わねェし・・・」
「・・・」
「馬鹿サルは妙に大人しいし?」
「・・・」
どう説明すればいいんだろう。
悟浄に作って貰ったラーメンを食べようとしたら、三蔵に大量のマヨネーズを入れられて食べられなくなっちゃった。
折角悟浄が初めてあたしの為に作ってくれたラーメンだから残さず食べたいのに・・・食べれない。
こんな・・・こんな風に、作ってくれた物を食べれず困ってる姿なんて見せたくなかった。
言いたい事が上手く言えず、泣き出しそうになっているあたしを見て助け舟を出してくれたのは、八戒だった。
「悟浄、一服する時間、あるんですよね?」
「あ?あぁ。」
「実は三蔵が空腹でのラーメンを取っちゃったんです。」
「・・・おい。」
「ですから、一服する前にの為にもう一度ラーメンを作って貰えませんか?」
にっこり笑顔で悟浄にお願いしているはず・・・なんだけど、その背後には『一服するくらい時間があるなら、ラーメンの一杯や二杯作れますよね?』という暗黙の了解が見える気がするのは気のせいだろうか?
「そりゃ別に構わねェけど・・・具材、さっきので殆ど使っちまったから普通のラーメンになるぜ?」
「煮込みラーメンで十分ですよ。ね、?」
「え、あ、うんっ!!」
とにかくマヨネーズなしのラーメンが食べれるなら!と思い大きく頷くと、悟浄がニンマリ笑いながら三蔵をチラリと見た。
「ナンだよ三蔵サマ♪そんなにオレのラーメンが食いたかったってか?」
「貴様・・・」
額に青筋を浮かばせながら懐に手を伸ばした三蔵の手を八戒が掴み、気持ちを代弁しているかのように大きく頷く。
「よっぽどお腹が空いていたんですね。」
「ハハハッ!よっしゃ!!ンじゃチャンの為に、も一回悟浄様特製ラーメン作ってやるか♪」
上着を脱いで袖を捲った悟浄は、鼻歌を歌いながら台所へと姿を消した。
残されたのは不機嫌極まりない顔をした三蔵と、そんな三蔵から視線をそらす悟空。
そして先程から一向に変わらない笑顔で、ラーメンの丼をあたしの前から三蔵の前に移動させる・・・八戒。
「・・・てめぇ、何考えてやがる。」
「別に何も考えていませんよ。ただ目の前でが悲しそうな顔をしているのを見るのが嫌だったんです。」
「八戒・・・」
「良かったですね、。今度は伸びきったラーメンじゃなく、温かい普通のラーメン食べられますよ。」
「うん!!」
「あ〜、何かオレもラーメン食いたくなってきた。」
「大丈夫ですよ、悟空。悟浄は少量作るなんて器用な真似出来ませんからね。きっと鍋いっぱいに作ってくると思いますから、悟空もと一緒に食べられます。」
「マジ!?やったーっ!」
大喜びする悟空の隣では、眉間の皺をさっきの倍にも増やした三蔵が無言で丼を横へ動かそうとしていたが、八戒がそれを見逃すはずは無い。
「三蔵。まさかそれ、残したりしませんよね?貴方の大好きなマヨネーズを一本丸ごと使っているんですから。」
「・・・」
「僕の前で食事を残すなんて馬鹿な真似、させませんからね。」
そう言ってにっこり微笑んだ八戒の背後は、何故か真っ黒に澱んで見えた。
暫くして鍋いっぱいに作られたインスタントラーメン(しょうゆ味)を残して、悟浄は再び出掛けていった。
さっき悟浄が言ったとおり、最初のラーメンに具材を使ってしまった為、ラーメンに入っていたのは卵とネギが少しだけだったけど、悟浄が作ってくれたと思うといつも以上に美味しく感じられる。
ちなみに八戒に温かく見守られながら、ごった煮ラーメンinマヨネーズを食べた三蔵は・・・完食後、暫くソファーで脂汗流しながらうんうん唸ってた。
この場合、食べあわせが悪かったのか、それともごった煮に問題があったのか・・・どっちなんだろう?
取り敢えず、食べ物で遊んじゃいけないって言うのは、何処の世界でも同じだなって思った。
マヨネーズ
三蔵と言えばマヨネーズ・・・いや、マヨラー。
ラーメンにマヨネーズを入れると聞いた瞬間「・・・う゛」と思った私ですが、実際それを当たり前のように行う方はいるのでしょうか?
三蔵だったら同席してみたいけど、一般の方だったら・・・嫌だなぁ(笑)
という訳で、ようやく悟浄作『ごった煮ラーメン』を登場させる事が出来ました!
いつか書きたいなぁと思っていたので、ここで使わせて頂きました。
結局三蔵が体調を崩した原因は何だったんでしょうねぇ(笑)
お題作成者:藍河華耶さんへ
そのまま話の中にマヨネーズを登場させてしまいました。
しかも三蔵のお題なのに、当たり前のように悟浄と八戒が・・・(汗)
三蔵ひとりだけだと、ちょっと会話が少なくて盛り上がらなかったのでいつものメンバーを登場させてしまいました。
多分、恐らく、きっと華耶さんの思ってる方向とは違う方へ進んだんだろうなぁ(苦笑)
お題企画に参加して下さってありがとうございました!!