外の空気は夏の暑さから、僅かに肌寒い秋を感じさせる物に変化してきた。
けれど、窓から差し込む日差しは、まるで春の日差しのように温かい。
それらを背に受けながら眠るは・・・あちらへ戻る前、輪郭がぼやける時の姿に似ている。
「・・・」
起こさないよう細心の注意を払いながら、そっと彼女の頭に手を乗せる。
ふんわりとした柔らかな髪が太陽の光を吸収し、温かなぬくもりを僕の手に伝えた。
「・・・」
出来る事なら、ずっとこうしていたいですね。
誰にも邪魔される事なく、二人だけの世界で・・・穏やかな日を過ごしてみたいと思いませんか?
決して言葉に出せない思いを、貴女に触れている指先に乗せて・・・伝えよう。
――― 愛していますよ
こんな風に誰かに愛を伝えられるなんて思いませんでした。
僕の手は・・・血で汚れているから。
でも、それでも貴女はそんな僕の手を取って笑ってくれる。
何も言わなくても、貴女は僕を・・・分かってくれている。
本当ならこの胸の内を全てさらけ出さなければならないはずなのに、貴女には必要ない。
髪の流れにそって、ゆっくりゆっくり何度も手を滑らせる。
指先に乗せた愛が、貴女の心に浸透するように・・・
温かな太陽の光によって清められた僕の手が、貴女に触れるのを許してくれる間・・・僕はずっとに、愛を語ろう。
決して、口にする事の出来ない愛を・・・指先に乗せて・・・
指先で語る愛
珍しく短くまとまっていて、更に甘い!と言える話になりました。
こんな風にスッキリ書けると物凄く気分がいいですっ!!
ただ触れるだけなら出来るけど、こんな風に自分の気持ちをこめて触れる時ってどんな感じなんでしょうね。
太陽の光で自分の手が清められている間、八戒はずっと愛をこめて触れてくれてると思います。
だから窓から日が差し込まなくなったら、きっとショールとか持ってきてヒロインにかけてあげるか、風邪をひいちゃいけないから声をかけて起こすと思います。
あれ?そう考えると・・・甘いというより切ない話なのか!?
お題作成者:響さんへ
応募多数の八戒お題の中から当選おめでとうございます(笑)
まぁ多数とはいえ、5つの応募だったんですが・・・それでも確率20%お見事です!
素敵なお題にふさわしい内容になったかどうか不明ですが、私的にはお気に入りのお話です。
うたた寝の八戒は口に出して愛を語ってくれませんが、こうして見えない所でめいっぱい愛を注いでくれてます。
そんな温かなシーンが書けて、とても嬉しかったです。
お題企画に参加して下さってありがとうございました!!