木の葉茶通りを歩く彼女の姿を見つけ、躊躇う事なく声をかける。

「おやぁ、先生偶然ですね。」

「カカシ先生?」

「凄い荷物ですね。手伝いますよ。」

「いいんですか?任務の途中じゃ・・・」

「ちょうどアカデミーに戻る所ですよ。」

彼女に向かって笑みを浮かべながらも、脳裏では文句を言っているナルト達の姿が浮かぶ。



――― 既にナルト達との待ち合わせに二時間ほど遅れているのだから・・・



「でも助かります。さすがにこの荷物を一人で持って帰るのは無理かと思ったので・・・」

「貴女がひと声かければ、どんな男でも手を貸すでしょ?」

「あははは、そんな魅力ありませんよ。」

そう言って手を横に振る姿を見て、思わずため息をつく。



ほんっと、何処まで鈍いんだろうねぇ、この人は。
今、彼女が声をあげて笑っただけでオレの背に刺さる視線の数は数人・・・いや、数十人にもなる。
彼女を笑顔にさせているオレへの嫉妬って所かね。



「いや、そんな事ありませんよ。」

「じゃぁ今度試してみようかな。」

「そりゃいい。でもその時はオレが目の前にいる時にして下さいね。」

「?」



――― オレが一番に貴女に手を貸しますから



本当はそう口にしたいのに、口に出来ない理由がある。

「ふふ、そんな所・・・あの人に似てます。」

彼女の胸元に下げられているネックレスがシャランと音を立てて揺れた。



木の葉の里の英雄・・・四代目が残した形見。



「あの人も良くそんな事言ってたんですよ。」

「へぇ・・・」

「でも、・・・結局来てくれる事はありませんでしたけど。」

寂しげに微笑む姿に、隣を並んで歩いていた足が一歩出遅れる。



自分はまだ、この人の隣を歩くべきではない。
彼女の隣を歩くには、まだ・・・時が早すぎる。



「カカシ先生?」

「あぁ、すみません。ちょっと用事を思い出したので、荷物だけ先にアカデミーに届けておきますよ。」

「え?それなら・・・」

「大丈夫。イルカ先生に預けておきますから、先生はゆーっくり来て下さい。」

オレの背中に彼女が何か声をかけたけれど、オレはそれを振り払うかのようにアカデミーへ急いだ。










「はー、どっこいしょっと。」

「あれ?カカシ先生。どうしたんですか、こんな所に。」

「あぁイルカ先生。これ先生に途中で頼まれた荷物なんですけど預かって貰えますか?」

「えぇ、それは構いませんけど。」

「じゃ、ヨロシク〜」

片手をあげて窓から外に出ると、ナルト達と待ち合わせをしていた場所・・・ではなく、アカデミーで使われる演習場へ向かった。
演習場の片隅にひっそりとたつ慰霊碑の前で、友の名ではなく・・・あの人の名を心の中でそっと呟く。

「・・・やはり、貴方を越えるしか彼女の心を動かす方法はなさそうだ。」





それまで、オレの彼女に対する想いは・・・貴方へ預けます。

――― 四代目・・・





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隠恋慕(かくれんぼ)
私には珍しい?片思い夢ですよ〜。
しかもお相手は四代目です(笑)
え?何で四代目かって?
んー・・・カカシ先生が敵わないって思う相手で、目に見えて自分との実力が測れない相手を考えたら彼しか浮かびませんでした。
三代目はおじいちゃんだしね(笑)
もうね、書いてる時から最後の台詞をカカシ@和彦さんボイスで聞きたくて聞きたくてっ!一人でカッコイイとか思ってジタバタしてました。
ちなみにナルト達との待ち合わせ場所に現れたのは、予定時刻から3時間半ほど過ぎた頃でした。

お題作成者:寅猫さんへ
私的隠恋慕(かくれんぼ)は、こんな形でまとまりましたが・・・い、如何でしょうか?
久し振りのカカシ先生が片思い夢になっちゃってすみませんっ(汗)
お題を見た時から、絶対片思いだって決め付けちゃって、それを変える事が出来ませんでした。
片思いの相手を変えたら、それはそれで面白いかなぁと思ったんですが(例えば同僚のイルカ先生とか、上忍の先生達とか、下忍の子達とか(笑))相手がカカシ先生ならライバル?は超えられない相手がいい!と思ったのでこんな形になりました。
お題企画に参加して下さってありがとうございました!!