「ん・・・」
カーテンの隙間から差し込む光が顔に当たり、そっと目を開ける。
ここ最近論文の仕上げでろくに寝ていなかった所為か、机でうたた寝をしてしまったようだ。
「・・・6時、か。」
机に置いていた腕時計を手に取り時間を確認して体を起こすと、肩にかけられていた物がずるずると落ちてきた。
「?」
床に落ちる前に手を伸ばし、それを広げる。
「・・・、か。」
彼女が寝る前に身につけていた上着を思い出し、思わず笑みが零れる。
恐らく眠ってしまった自分にそっとかけてくれたのだろう。
「この時間ならまだ寝てるだろうな。」
論文の所為で彼女と過す時間も最近あまり取れていない。
いつもより少し早いが、たまには一緒に朝食を食べるのもいいかもしれないな。
そう考え、書きかけの論文をそのままに、彼女が休んでいる寝室へと足を進めた。
極力足音を立てず、そっと扉を開けて中へ入る。
「・・・?」
しかし、そこに彼女の姿は・・・ない。
ベッドに近づき触れてみるが、先程まで眠っていたような形跡は見受けられない。
「どこへ?」
昨夜、帰って来た時からの会話を思い返してみるが、特に何も思い当たらない。
深夜に外出する、などという事は彼女の性格上考えられない。
それに朝に弱い彼女が、こんな時間に出かけるとも思えない。
何より、自分にひと言も告げずに彼女が自分の前から姿を消すとは・・・思えない。
心に押し寄せる不安を打ち消すよう、俺は彼女の姿を求めて家中を歩き回った。
寝室、書斎、洗面所、浴室・・・台所。
どこにも、彼女の姿はない。
「・・・」
忙しい時など顔を合わせる事は日に数回程だというのに、何故こんなに不安になるのか。
「・・・。」
ふと呟いた声が、主のいない部屋に響く。
側にいるのが当たり前だと思っていた。
いつでも、どんな時でも側にいてくれる・・・と。
それなのに、君の姿が見えないだけで、俺はこんなにも・・・弱くなる。
「彼女と出会う前は、こんなの当たり前だったのにな。」
1人でいるのが当たり前だった。
自分には、これが、当然の姿なのだと。
けれど、彼女出会い・・・初めて人の温もりを知った。
今では大切な彼女がいて、親友と呼べる人間もいる。
「・・・。」
もう一度、愛しい人の名を呼ぶと・・・玄関から小さな物音が聞こえてきた。
足早に玄関へ向かうと、今までずっと探していた彼女が大きな欠伸をしながら・・・いた。
「。」
「あ、あれ?怜!?」
驚いた顔をした彼女を、そっと抱き寄せる。
「さ、怜!?」
「・・・すまない、暫く・・・このままで。」
「う、うん?」
突然の事に驚いているけれど、俺の様子がおかしいと思ったのか、何も言わず静かに抱きしめさせてくれる。
まるで、幼い子供のようだ。
大切な何かがこの手から奪われてしまい、ようやく見つけた大切な物を握り締めるような・・・そんな感覚。
君の姿が見えないだけで、俺はこんなに弱くなる。
けれど、それを俺は弱みにはしない。
君がいれば、俺は・・・何より強くなれる。
だから、側にいて欲しい。
誰よりも、俺の・・・側に。
君の不在
うっひゃぁ〜、ものすんごい久し振りの日渡くんです。
・・・危なく脳内から消えかけていて、自分の書いた小説を読み直して復活させたのは内緒です(苦笑)
もうすでにあのカップルは出来上がっちゃってるので、姿が見えなくて不安になる日渡くんしか浮かびませんでしたっ!!
若干偽者・・・ですが、すみませんが大目に見て下さると嬉しいです(汗)
お題作成者:空音さんへ
日渡くんでお題を頂くとは思いませんでした(笑)
久し振りだったので、ちょっと戸惑いましたが・・・そ、その上若干偽者で申し訳ありません。
空音さんの想像していた方向へ進んだかどうか心配ですが、サイトで取り扱っているD・N・ANGEL作品と同じ甘さだけは意識したつもりです!!
お題企画に参加して下さってありがとうございました!!