「ペーターの目って、宝石みたい。」
「宝石、ですか?」
押し倒された体勢で、本当はそんな事言う余裕なんてないはずなのに・・・ふと気になったら、体勢なんかどうでもよくなった。
「光が当ると、キラキラ赤く光って・・・なんて言うんだっけ。」
「赤、宝石・・・と言うと、ルビーですか。」
「ん〜、そうなんだけど・・・」
そんな単純な物じゃなくて・・・ん〜〜〜っ
「あの、・・・」
「黙ってて。思い出せないっ!!」
「ハイ・・・」
しゅん、と耳を垂れさせてしまったペーターの目を見ながら考えるが思い出せない。
ふと、その時・・・茂みの方から人の気配を感じて、ペーターが顔を上げる。
「・・・誰です。」
「あっ、あの申し訳ありません。女王陛下から宰相閣下を探すよう申し付けられまして・・・」
「見てのとおり、僕は取り込み中です。」
「で、ですが・・・」
「・・・役なしの君が、宰相である僕に意見するんですか?」
そう言って兵士に時計を向けた瞬間、ぼやけていた単語がくっきり脳裏に浮かんだ。
「あーーーっ!!!」
「?」
「思い出した!ビジョンブラッド!!」
「・・・鳩の血、ですね。」
「直訳するとそうだけど、ルビーの中で最高級って言われる物よ。」
「・・・」
「ペーターの瞳、それに似てるんだ!」
満足すると、現状がようやく目に飛び込んできた。
硬直した兵士と、その兵士に銃を向けているけれど、押し倒したままあたしの上に乗っていて視線はこちらを向いたままのペーター。
「・・・ね、ペーター。」
「はい。」
「もうちょっとその目をよく見たいから、銃を下ろして。」
「すぐ片付けます。」
「あなた以外の赤は見たくないの。」
「僕以外見なければ問題ありません。」
「・・・血は見たくない。」
「でも、彼を殺さないと僕は仕事に行かなきゃいけない。」
「ビバルディにはあとであたしが謝るから・・・」
「あなたが頭を下げる必要はありません。彼を殺せば伝令は届かない。」
このままじゃ、本当に血の雨が降りそうだ。
少し上体を起してペーターの頬に軽く口付け、もう一度お願いをしてみる。
「血は、見たくないの。」
「・・・・・・分かりました。」
銃を元の時計に変え、その苛々をぶつけるかのような視線で兵士を睨む。
「もう一度日が変わったら女王陛下の下へ伺います。」
この目だ。
あたしに向ける目ではなく、宰相である時のペーターの目は・・・極上のルビーだ。
「さぁ、。邪魔者はいなくなりましたよ。」
にっこり笑顔で振り向いた彼の瞳は、ただのルビー。
でも、それを悟られないようにっこり笑顔で片手をペーターの頬に添える。
「そうね。」
そしてもう片方の手で、ポケットに入れていた砂時計を引っくり返す。
もう一度、あのビジョンブラッドに会うために。
耳が垂れて拗ねてるペーターが愛しいです。
例えその裏に何が隠れていようと関係なし(笑)
アリスを知らない方のために、砂時計ってのは時間を操るアイテムです。
使用すると好きな時間帯(朝・昼・夜)に変えられます。
だから、最後に時計を引っくり返して宰相閣下のペーターを呼び戻してるんです。
・・・ペーターには本当に申し訳ないんだけどねぇ〜(苦笑)
でも、本当のペーターだったらこっちが止める前に既に兵士を撃ってる気がします。
気が短いんだよなぁ・・・ってか、手が早いっていうか・・・←色んな意味で。