にこにこ笑顔で膝に頭を乗せて気持ち良さそうに休んでいるペーターに声をかける。
「ねぇ、ペーター。」
「なんですか?」
「眼鏡、借りてもいい?」
そう言いながら、彼の眼鏡に手を伸ばすが・・・その手をあっさり掴まれる。
「駄目です。」
「なんで?」
「どうしても、駄目です。」
――― そう言われると、取りたくなるじゃん
そう思って手に力を入れるけど、ニコニコ笑顔のウサギさんの力は強くて・・・ピクリとも動かない、動かせない。
「わかった、取らないから。」
「本当ですか?」
「うん。だから、ひとつ教えて?」
「あなたの頼みならなんでも。」
・・・たった今、眼鏡貸さないとか言ったヤツの台詞じゃねぇ。
けど、都合のいい事しか耳に入らないペーターの所業に慣れたあたしは、大して気にも留めず尋ねた。
「それ伊達眼鏡?」
「・・・は、どちらだと思いますか?」
・・・聞いてるのはあたしなんだけど。
さすがに頭が痛くなってきた。
「わかんないから、聞いたの。」
「僕も分かりません。」
「はぁ!?」
「眼鏡があってもなくても、物を見る事に不便はありません。」
「それ、眼鏡の用途に関係ないじゃん。」
「・・・でも、それもあなたがこの世界に来るまでの事です。」
「???」
お得意の笑顔・・・ううん、最近良く見る少し切なげな笑みを浮かべたまま、掴んでいた手を離して両手をあたしの首に回す。
どこか、甘えるような仕草。
「あなたがこの世界に来るまでは、誰を殺しても構わなかった。」
「・・・」
「だから、眼鏡なんていらなかったんです。」
「・・・」
「でも、あなたが来たから・・・僕は、誤って銃を向ける事が出来なくなった。だから・・・これが必要なんです。」
「ペーター・・・」
「でもがこれを伊達だというなら、そうなんでしょう。だって、今の僕には必要ありませんから。」
――― さっぱり意味がわからない
「・・・わ、わかんない。」
「おかしいですね。説明が足りませんか?」
「足りないとか足りなくないとかそういう問題じゃないでしょ・・・多分。」
ぎゅ〜っと抱きついたまま、擦り寄りながらペーターは楽しそうに答えてくれた。
「腕に抱いているあなた以外いりません。だから、今ならどこへ銃を向けても構わないんです。」
ほら、こんな風に・・・とでも言うように、ペーターを迎えに来た兵士がひとり・・・殺された。
「ちょっ、ペーター!?」
「・・・あなたとの時間を邪魔するヤツなんて、全て殺してやりますよ。」
にっこり微笑む彼の笑顔は、ウサギの笑顔から宰相の笑顔に変わっていた。
彼の眼鏡は、伊達なのかそうでないのか・・・いまだ分からない。
実はこれが最初に書いた話です。
あの眼鏡は伊達かそうでないかってどうでもいいよな。
だって、ペーターはアリス以外どうでもいいんだから。
だから目が見えようと見えなかろうと関係ないだろ・・・と、勝手に思ってます。
でも、大切な物がこの世界に来たから(アリスとヒロイン)自分以外を撃つ事が出来なくなった。
・・・誤って二人を撃つことなんて万に一つもこの人の場合ないと思うけどね。
だから、眼鏡が必要になった。
大切な物と、どうでもいい物を見分けるために。
ま、そんな事考えながら書いたので、実は書いてて意味が分からなくなったってのが真実だったりします(笑)