脱がされかけた襟元を片手で押さえたまま、もう片方の手でペーターの両耳をまとめて掴む。
「あぁもぉ〜〜〜っ!この耳は何を聞いてるのっ!!」
「いっ・・・・・・たたたたっ・・・だから何度も言っているじゃありませんか〜」
「あたしも何度も言ってるでしょっ!!」
――― ところ構わずその気になるなって!!!
しかも、今日は庭を散策している時だ。
ここは兵士やメイドさんも仕事でうろうろしている場所だし、エースの迷子のメッカでもある。
いつ誰が来るかもわからない。
いや、来ないならいいとか言う問題でもないんだけど・・・
ポンッと音がしたと思うと、いつの間にか耳を掴んでいたペーターが小さなウサギの姿に変わっている。
「〜離してください〜」
くっ、小さくなれば許されると思って・・・と、心の中で毒づいてはいるけれど、小さなウサギ姿のペーターは・・・文句なく可愛い。
ちょっと潤んだ瞳で見上げられ、鼻をぴくぴくさせている姿を見たら・・・自然と手の力も緩んでしまう。
「僕を好きで仕方が無いのはわかりますけど、愛の方向がちょっと違いますよ〜」
「・・・」
「あ、でも、あなたが望むなら・・・僕、いじめられても構いません。」
お願いだから、頬を染めながらそんな台詞言わないで。
まるであたしがビバルディのような女王さまみたいじゃないか。
はぁ〜と大きくため息をついて、最後にペーターの耳を思いっきり引っ張る。
「今度やったら、その耳ちょん切るからねっ!!」
そう言って遠くに放り投げ・・・る事も出来ず、いつものように胸に抱いてやると、引っ張っていた耳を小さな手でさすりながらペーターが呟いた。
「いいですよ。」
「?」
「になら、この耳・・・切られても構いません。」
「え!?」
「その代わり・・・ずっとず〜っと愛して下さいね。」
「・・・」
「もうウサギの姿になれないかもしれない。でも、あなたが愛してくれると言うのなら、こんな耳いつでも切って貰って構いません。」
まっすぐあたしを見つめるウサギの目に、さっきまで浮かんでいなかった狂喜の色が浮かんでいる。
「あなたの愛と引き換えに出来るなら、こんな耳・・・安いもんです。」
・・・本気、なのがペーターの怖い所です。
耳を切るぐらいで、愛しい人が手に入るなら笑顔で切りますよ、この人。
ほんで、耳から血を流しながら両手を伸ばして、愛してる、とかいいますよ。
・・・おかしい、なんでこんな人好きなんだろう(困惑)
狂喜の愛だけど、ある意味一途で漂白された愛だよなぁ・・・矛盾してそうだけど。