「え〜いいじゃん、俺にやらせてよ」

「駄目だ」

「あはははは、ケチだなぁ、ユリウスは」

「…そういう問題ではない」

「でもさ、独り占めはずるいんじゃない?」

「ずるくない」

美味しい茶葉を買って来たからお茶にしよう…と言っただけで、どうしてこうなったんだろう。

「冒険中はいっつもひとりでお茶してるから、腕前披露したいんだよね」

「やめろ」

「えー、なんでだよ」

「また迷いたいのか!!」

「目の前の台所へ行くくらい大丈夫だって」

「そう言って、この間迷ったのはおまえだっ!!」

そう、この間お茶菓子を取りに目の前の台所へ向かったはずのエースは…18回時間帯が変わっても戻って来なかった。
そして22回目の昼…あたしとユリウスに、時計塔内で発見された。



勿論、その手にお茶菓子は ――― ない



「あれは運が悪かったんだよ。外に出た瞬間、カラス…」

「目の前の台所へ行くまでに、何故外に出るっ!」

「普通に行っても面白くないだろ?」



…面白さを求めないで欲しい



そんなやり取りを繰り返して、もうどれくらい経っただろう。
いい加減、喉の渇きも限界に来たので、とっとと淹れて来ようと席を立った瞬間…腕を掴まれた。

「じゃあ、と一緒に行く。それならいいだろ?」

そのまま引きずられそうになったが、すぐにもう片方の手を取られた。

「…駄目だ」

「別に何かするわけじゃないさ」

「それでも…駄目だ」

「…へぇー、何かするって思ってるんだ」

「しない、とも言い切れまい」

あはははは、わかったわかった」

何が分かったのか分からないけれど、エースはあたしの手を掴んだまま、空いているもう片方の手でユリウスの腕を掴んだ。

「みんなで一緒に楽しもう」

「なっ…」

「俺も仲間外れは嫌だし。うん、これなら皆楽しめる」

「ばっ…馬鹿…」

「あれ、それともユリウスはと二人っきりで楽しみたかったのか?それなら悪い事したな…けど、俺、ひとりは寂しいんだ」

「…思ってもいない事を」

「寂しいのは本当だぜ?さー、とっとと茶を飲んで行こう!」



――― 何処へ?



「夢の国、って所かな?」

「…はぁ、全く…」

鼻歌交じりで歩き出したエースの足が向かった場所は…屋上。
その後、ユリウスとあたしが何度台所の場所を示しても、彼の足がそちらを向くことは…なかった。





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VSシリーズ…ってタイトルで押し通します!
今回は時計塔コンビ?ってことで、エースとユリウスです。
ハートは楽しく遊んだんですが、クローバーではユリウスがいないので寂しいです。
…常識人がいない、照れ屋さんがいない…あぁ、つまらない(おい)
エースに振り回されるのが1人だと辛いですが、2人なら楽しく思えるのは何故でしょう?
ちなみに私は、エースほど酷い方向音痴ではありませんっ!