「じゃんけんぽん、あっち向いてほい」
「あー、また負けた〜」
「残念でした〜♪」
膝に乗せているスケキヨの背中を撫でながら目を細める皆川先輩に、さり気なく尋ねてみる。
「どうやったら皆川先輩に勝てますか?」
「おやぁ?ひょっとしてちゃん、僕に勝ちたかったのかな?」
「…1回ぐらい何かで勝ちたいなぁって思っただけですけど」
何でも出来る皆川先輩
何も怖い物がない皆川先輩
そんな先輩に、ひとつくらい勝ってみたいって思うのは馬鹿な事かもしれない。
「あれ、知らないのぉ?」
「何をですか?」
「僕、すでに君に負けちゃってるんだけど」
「…」
――― 何にですか?
ジャンケンに始まり、様々なゲームやクイズ、全て先輩がいつも数歩先を読んでいるというのに、一体あたしは何に勝ってるんですか!?
「あの、何にですか?」
「教えて欲しい?」
「はいっ!!」
握り拳を作って皆川先輩の方に身を乗り出したら、不意に頬に柔らかな物が触れてそのまま固まる。
「…」
「初めて会った時から、ずっとちゃんに惹かれちゃってるからね」
「…」
「君の一本勝ち、ってところでしょ…ねぇ、スケキヨ」
皆川先輩の言葉に同意するよう、膝の上で眠っていたはずのスケキヨがひと声鳴いた。
へたりと座り込むよう、椅子に腰を下ろして頬を押さえる。
初めて会った時から惹かれていることが負けだというなら、今回も私の負けかもしれない。
だって、お店に来た時からずっと…あなたのことしか、見えていなかったから。
――― やっぱり、彼には敵わない
web拍手再録。
…とはいえ、書いたのは2005年となってます(笑)
手直しで名前変換箇所を追加した上での再録です。
カフェ吉のお部屋が掃除(と書いて、校正&統一)出来たら、皆様にお披露目出来ているでしょう(笑)
さて!貴方!そう、そこの貴方っ!!
貴方がこれを目にしているのは、果たして西暦何年!?(笑)←笑えません