「真希先輩、3番テーブルのデザート出来ました」
「はいは〜い」
キッチンからケーキを載せた皿を片手で受け取りつつ、真希は空いている方の手でのもう片方の手をそっと握った。
「…先輩、手を離してもらわないと仕事できないです」
「ん〜少しくらいいいって♪それにしてもやっぱりいいなぁキッチンに立ってる女の子って…心が休まるというか…」
「真希先輩っ!」
がどんなに慌てた声で言ったとしても、真希の口は止まらない。
「でも、どうせなら白いフリルのエプロン着て「真希さん頑張って」とか言ってくれたら…」
握っていた手をさらにぎゅっと握り締めて幸せをかみ締めるが、そんな平和も長くは続かない…。
「どうでもいいが、彼女の手を離してとっとと運べ。お客様がお待ちだ」
カーンという金属音と共に銀製のトレイが何処からともなく飛んできて真希の頭にヒットした。
それを投げたのは勿論、チーフである太郎である。
「太郎!オレ様の顔に当たったらどう責任とってくれるんだ!」
「さん、コイツが絡んできたら無視してかまわないから」
「はぁ…」
「ムシかよ!!」
「話をする時間も惜しいな」
「あのなぁ!!」
そんな2人の横からバイトである徳がひょっこり顔を出した。
「すんませーん!5番テーブルのクレープまだですか?」
は何とか真希の手から自分の手を取り返すと、すぐにキッチンにいるもう一人のスタッフである皆川に声を掛けた。
「あ、徳美くんごめんね。皆川先輩クレープお願いします」
「は〜い、クレープ出来てるよぉ〜」
何処からともなく現れた皆川が徳の前にクレープの皿を置いた。
白いお皿の上にキチンと折り重なったクレープに赤いソースがかかっている。
その上には白い生クリームが乗っていて、さらにその脇には綺麗に切られた果物が並んでいる。
一見普通のクレープ…ただ、その皿を見つめる皆川の目は何処となく楽しそうで。
「今日のクレープは…生暖かくて、赤くて…とっても綺麗…」
「…持ってっていいっスか?」
苦笑しながら皿をトレイに載せると徳は踵を返し、目的のテーブルへと足を踏み出した。
「…気をつけて持って行ってね…ふふふっ…」
口元に手を当て楽しそうにキッチンへ消えていく皆川の背中は…何かを無言で語っていた。
その意味は皿を持って数歩歩いた徳の悲鳴が全てを語っていた。
「げっげっげぇ〜」
「ぎぃやぁぁっっ、く、クレープが笑ったぁ!?」
「新作…ひふみクレープ。少しでもお皿が傾いてソースが流れると…クレープが笑う。ちなみにナイフを間違えた所に突き刺すと…断末魔が上がるよ。ふふふっ…」
キッチンから顔を出して心の底から楽しそうに徳の様子を見て笑っている皆川を見て、思わず真希の背筋が凍った。
「…たまには普通に作れよ」
「いつも同じじゃつまらないでしょ?」
「だって一応客に出すんだろ?」
「大丈夫、アレは…ヒトには食べられないから」
「食べられないものをどうして徳さんに運ばせたんですか?」
学校が長引いて今フロア入りした純が途中から会話に参加した。
皆川はその質問に何も応えず、ただ徳が向かったテーブルをそっと指差しポツリと呟いた。
「だって、あのヒト…ヒトじゃないから…」
「何だって!!」
太郎が徳の向かって行ったテーブルに視線を向けると…今まで普通の女性が座っていたはずのテーブルには、何故か胡散臭い黒いガウンを頭からかぶり、手には長い棒…その先にはキラリと光る半月状の鎌を持った謎の人物(?)が座っていた。
「誰のお迎えなのかなぁ〜」
「そういう問題かぁ!?」
「徳さんあのまま連れて行かれたりして…」
「真顔で恐い事言うなよ純!!」
「皆川先輩って凄いですねぇ、どんな方にでも的確なメニューを出せるなんて…私にもできるかしら?」
普通だと思われていた女性スタッフ。
キッチンで働き始めた事が、徐々に何かを狂わせてしまったのだろうか。
「「いや、そんな事しなくていいから…」」
太郎と真希は息も行動もピッタリ同じで、尊敬の眼差しで皆川を見つめるの肩を叩いた。
「今度教えてあげるよ、な〜んでも…ね。ふふふ…」
何処から取り出したのか扇子の様なもので口元を隠して笑うその姿は…異様としか言えない雰囲気をかもし出していた。周りの人間を固まらせるような笑いをピタッと止めると、今度はおやおやと言う表情で徳がいるテーブルの方に視線を向けた。
「それよりも…そろそろ徳ちゃん助けないと本当に逝っちゃうかもしれないねぇ?」
「あぁ、何だか顔色悪いですね」
皆川と純の視線の先には、フードの下からがい骨の顔が現れその口元らしき所は真っ赤に染まっている客(恐らく口元の赤はイチゴソースだと思われる)が今まさに床に倒れている徳の首に鎌を振り下ろそうとしている所だった。
「だぁぁっ〜徳ぅ!!」
真希は一応慌ててはいるが、体はしっかりカウンターの陰に隠れて安全を確保していた。
「皆川何とかしろよ!」
「ん〜でもお客様だからねぇ」
一応チーフである太郎は原因と思われる皆川に声を掛けるが、当の皆川はのんびりとした調子で怪しげなレシピに何やら書き込んでいる。
「そうですよ。まだお会計も済んでませんし…その後でいいんじゃないですか?」
純は対して慌てた様子もなく、次の事態に備えてモップとバケツを用意していた。
全員が様々な反応を示している中、今までこの状況に口を出さなかったがポツリと呟いた。
「もし今徳美くんが死んじゃったら明日からフロアの人数一人減って仕事増えますね。明日は連休初日の土曜日だし…」
暫しの沈黙の後、それぞれが手に武器を持つと沈痛な面持ちで悲鳴が響く窓際の席へと足を進めた。
「げっ、そりゃまずい」
「人手が足りないのは痛いな」
「僕明日早く帰りたいんですよね」
「それじゃぁ残念だけど今日の所は、早めに帰ってもらおうかな…」
そんな感じでカフェ吉祥寺の日々は始まり、そして終る。
馬鹿だぁ(爆笑)
いや〜皆川さんの黒さがツボにはまって、書く話書く話がおかしな物になっている。
思わずドリームって一体なんだろうと思った今日この頃(苦笑)
お話考えるのは面白くて楽しいんだけどなぁ…カフェ吉祥寺。
この原型は…分かる人は分かる…断末魔をあげるスコーンからきています(笑)
かぼちゃ大王は出てきません(笑)本当にCD5は何度聞いても飽きないなぁ〜♪
ちなみにこのお客様誰だか分かりますか?
黒いコート着て、顔がガイコツで、手に鎌を持っているといえば…死神です(笑)
誰が召還したかは知りません(爆笑)
皆川さんのケーキの美味しさは世界だけでなく時空も超えちゃうんですかね。(まとめ?)