「気持ちいい、スケキヨ?」
「にゃぁ〜」
大きく丸い体をブラッシングしてあげると、気持ち良さそうに目を細める。
「スケキヨはブラッシング好きだよねぇ〜」
「にゃぁ…」
気持ちよくて眠くなったのか、スケキヨは大きな欠伸をひとつするとうとうとし始めた。
休憩時間はまだいっぱいあるから、それなら少しお昼寝させてあげようかな。
そう思ってブラシをしまって、今度は手で背中を撫でてあげた。
うふふっ太陽の光いっぱい浴びてスケキヨの体ふっかふかだ。
鼻歌を歌いながら背中を撫でていると、頭上から聞き慣れた声が聞こえた。
「あれぇ?寝ちゃったの」
「はい」
窓から声をかけて来たのは…カフェ吉祥寺の敏腕パティシィエの皆川先輩、そして私の憧れの人。
「の膝で気持ちよさそうだねぇ…」
「さっきまでブラッシングしてたからですよ」
「あぁそうか。だからスケが綺麗になってるんだね」
「綺麗だって、良かったね〜スケキヨ」
自分が褒められたワケでもないのに、皆川先輩にそう言ってもらえると嬉しい。
思わずスケキヨのヒゲをちょいちょいっと引っ張ると、一瞬尻尾が私の体をペシッと叩いて再び垂れ下がった。
――― ひょっとして、今の…ツッコミ?
垂れ下がる尻尾を見ていたら、部屋の中にいた皆川先輩がいつの間にか裏口から外に出て私の隣に腰を下ろした。
「はい、これ差し入れ」
「え?」
振り向く前に私の頬に冷えたグラスが当てられて思わずビックリして反射的に目を閉じた。
「ケーキの余りで悪いけど…」
「あ、ありがとうございます」
目を開けて額に当てられたグラスを受け取る。
太陽の光を反射して光る黄色い液体には、小さなミントも乗せてある。
「サッパリするよ」
「はい、いただきます!」
ちょうどノドが渇いていたのでグラスに口をつけて味わうようにゆっくり飲む。
スッキリしたグレープフルーツの酸味が、日差しでほてった体を冷やしてくれる。
一息ついて、午後の仕事は何から片付けようかと考え始めた瞬間…肩に何かが当たった。
「?」
ふと視線を横に向けると目に入ったのはさらさらの髪。
「…?」
そして徐々に聞こえてくる、安らかな吐息と重みを感じ始めた肩。
そこまでしてようやく皆川先輩が肩に寄りかかってるという事に気付いた。
「?!」
内心あがった悲鳴を一生懸命飲み込む。
あの皆川先輩がまさか隣でうたた寝をするとは間違っても思わない。
「みなが…」
名前を呼びかけて慌てて口を手で塞ぐ。
そう言えば夏のフェアで何個も試作ケーキを作って疲れてるのかもしれない。
それに今日は徳ちゃんと純くんがテストで入りが遅いから、厨房スタッフの私も外と中を出たり入ったりして皆川先輩の負担大きいのかも。
膝にはスケキヨ、肩には皆川先輩…そして手には先輩が差し入れてくれた良く冷えたグレープフルーツジュース。
「…休憩終了まであと10分」
太陽の日差しを手で遮りながら、私は一人と一匹に自らの体を明け渡す事を決めた。
彼女が気を許して、裏口の扉に体重をかけたのを見計らって…うっすら目を開ける。
キミはいつもそうだよね。
誰かが頼るとそれを無条件で受け入れる。
相手が動物でも人間でも変わらない。
そんな所も僕は気に入ってるんだけど、最近少し変わってきたんだ。
その目に映る、ちゃんの中の一番って…なんだろう。
出来る事なら僕がそこに入りたいけど、そうするにはどうすればいいのかなぁ〜なんてね。
15のお題ボツ作品、カフェ吉バージョン2。
こっちは一応本編も考えて手直しをしました。
だからこれは普通にUPしても問題ないだろう…と思ってます(苦笑)
やっぱりスケキヨが出て来るのは作者の趣味w大好きです、スケキヨ♪
あの 皆川さんが人の肩を借りて休むなんて全く想像がつきませんが…それは夢小説ですので、ありって事で!!
逆を言えば、あの皆川さんにそこまでさせる彼女が凄い、と言うべきでしょうか(笑)
さてさて、この後皆川さんはどうやって自らの彼女の一番に固定させたのか!!
それは、私にもサッパリ分かりません(笑)