「おいで、姫君。」
そう言って手を伸ばしてくれるあの人は左近衛府の少将
帝ともお話できるくらい偉い人で、龍神の神子を守る地の八葉
対するあたしは・・・異世界から来た龍神の神子でも八葉でもない、ただの ――― 人
「・・・おや?どうしたのかな。」
普段なら友雅さんが手を差し伸べてくれたら、躊躇う事なく手を伸ばしていた。
でも、今日は・・・それが出来ない。
「何かあったのかな。」
優しく声をかけてくれるけど、その理由を口には出来ない・・・絶対。
何気なく耳に入ってきたお喋りな女房達の噂話。
――― 友雅様が家柄容姿共に申し分ない相手と結婚する、と
そんな噂、いつもならすぐに友雅さんの所へ行って真相を確かめるんだけど、その時はそれが出来ず、女房の人達がその場からいなくなるまで柱に寄りかかって立ち尽くしていた。
もし、友雅さんに尋ねて肯定されてしまったら、あたしはどんな顔をすればいいのだろう。
あたしには身分も家柄も教養も何もない。
あるのはただ、友雅さんを想うこの気持ちだけ。
「憂い顔もいいが、君は笑っている方が可愛らしいよ。」
そう言いながら艶やかとは言いがたい短い髪を撫でてくれる手があまりに優しくて、そのまま泣いてしまいそうになる。
好き・・・大好き・・・
でも、言えない
身分だけじゃなく、世界も違う片思い
■切な甘い10のお題■身分違いの片思い。
身分違い、と言えば・・・と思って思うがままに書きました。
切ないよなぁ、友雅さんなら結婚話あっさり出そうだし・・・それなのにそんなの絶対顔に出さないだろうし。
基本的に甘いけど、切ない・・・を目標に全部頑張ってます!!