「・・・間に合いませんでした、か。」
夕食後、向こうでの仕事で疲れていたのか、いつもより早目に寝ると言った彼女に渡したい物があった。
けれど、三蔵達の食事がまだ済んでいなくて、席を立つわけにも行かない。
「少しだけ起きて待っていてくれますか?」
悟空のお替りを用意する間に、コーヒーを一杯用意して彼女に手渡すと、目元を擦りながらも小さく頷いてくれたので、出来るだけ急いで皆さんに食事を終えて貰った。
そして一旦部屋に戻り、用意していたプレゼントを持って彼女の部屋へ向かったのだが・・・
部屋に残っていたのはベッドサイドに置かれた、まだ温かいコーヒー。
そして、一生懸命起きていようとしてくれた様子が伺える、乱れていないベッド。
彼女がここで眠って向こうへ戻ったというのならば、少しはその温もりが残っているかと思いシーツに手を伸ばしたが・・・そこは主の残り香もなく、冷たいままだった。
「・・・冷たい。」
手に持っていた箱をベッドに置き、彼女が残していったコーヒーカップを手に取り・・・ひとくち飲んだ。
猫舌の彼女でも飲みやすいようにと、いつものようにミルクを多目に入れたコーヒーは、普段自分が飲むものとは少し違う味がする。
「何だか胸にポッカリ穴が開いたみたいですね。」
クスリと自嘲にも似た笑みを浮かべ、もう一度シーツへ手を伸ばす。
温くなったコーヒーよりも冷たいシーツは、彼女がいなくなった事をより・・・実感させる。
■切な甘い10のお題■去った後のシーツの温度。
あ〜うぅ〜自分で書いてて、どうして切なくなるかなぁPart2(苦笑)
うたた寝で彼女が向こうの世界に帰っちゃった後の八戒の心情ですかね。
冷たいシーツってその人がそこにいないって状況をより実感させますよねぇ・・・あー切なっ!
切ない中に違う物を探すならば、八戒が真っ黒な笑顔で三蔵達に食事を急かした光景がちょっと見てみたいってトコでしょうか?