最初は、駅前にある可愛いお店って思った。
何度か会社帰りに寄ろうかなって思ったけど、その時は寄り道する余裕も無いくらい疲れていたから素通りしていた。

ある日、凄く気になってお店に足を踏み入れたら、妙に明るいお兄さんに声をかけられた。
どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか分からない人。
でも、凄く花を大切に扱ってる人。

――― ちょっと興味を持って、お勧めの花を買った。





「結城さん!」

「あ〜、いらっしゃい。今日のお目当ては?」

すっかり顔馴染みになった、私の大好きなお花屋さんの店長さん。
いつも声をかけるとお花と結城さん、どちらが目当てか聞かれる。
普段なら即答で花って答えるんだけど、徐々にその考える時間は長くなっている。

「・・・お花、かな?」

それでもまだ、お店に来る理由は・・・お花。

「あっはー、まだ花には勝てないか。」

「だって、綺麗なお花ばっかりあるんですもん。」

「カワイコちゃんには綺麗な花を持っていて欲しいからね。」

ウィンクしながらそんな風に言われ続けて、気付けば結城さんと話す時間が増えている。

「さて・・・と。今日はどんなお花をお探しですか?」

「今日は鉢植えを買いに来ました。」

「へぇ、ようやくチャレンジする気になった?」

「はい。でも、もし分からない事があったら・・・」

「遠慮なく聞きにおいで。もし何だったらオレが出張講師してあげるからさ。」

「あはははは。」

「初心者でも簡単な鉢植え、幾つか見繕ってくるよ。」

店の奥へ結城さんが姿を消した瞬間、ほんの少し赤くなった頬を手で押さえて冷やす。



眺めていたお店
通うようになったお店
そして、顔馴染みになった店長さん

・・・これから、どんな風にあの人との距離を縮めていけばいいのだろう?





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■切な甘い10のお題■遠距離・中距離・近距離。
気になるお店に突然飛び込めないのは、私だったりします。
しかもそれが店員さんに話しかけられる可能性が高ければ尚更。
という訳で、遠くからどんどん距離を縮めていくって事で結城さんのお花屋さんを選んでみました〜♪