「待って下さい、先輩!」

そう言って、望美先輩の後を走って追いかけていく譲くん。
二人に置いていかれたくなくて一生懸命追いかけるけど、その差はどんどん広がるばかり。
普段なら気遣ってくれる譲くんも、今は前しか見ていない。



――― 望美先輩しか、見ていない



そう思った瞬間、チクリと胸が痛んで首を傾げる。





望美先輩も、将臣先輩も、譲くんも・・・皆好き。
尊敬出来る人達だし、見習うべき所も憧れている所もいっぱいある。
だから、譲くんが望美先輩の事を気にかけるのも当たり前だと思っていた。





「ったく、また譲のヤツ望美を甘やかしてんのか?」

「・・・将臣先輩。」

「ガキの頃から変わんねぇなぁ。」

足を止めたあたしの隣に立っている将臣先輩を見ても、胸の痛みは・・・ない。
だけど、前方で望美先輩の腕を掴んで話をしている譲くんを見ると・・・胸が、痛い。

「おい、どうした?怪我でもしたか?」

「え?」

「妙に神妙な顔してるぞ。眉間に皺寄ってるしな。」

・・・!?

トントンと眉間を先輩につつかれて、それを隠そうと両手で額を押さえる。

「・・・ま、あんま深刻になんなよ。」

そう言うと将臣先輩がいつものように頭をぐしゃっと撫でて、前にいる二人の方へゆっくり歩いていった。

「眉間に・・・皺?」

鏡を持っていないから確認する事は出来ないけど、先輩が言うならそうなんだろう。
その原因が何だかよく分からなくて、ん〜っと腕を組んで考えていたら・・・足音がひとつ近づいてきた。

「具合悪いんだって?」

「え、ゆ、譲くん?!

パッと顔を上げると、心配そうな顔をした譲くんが目の前にいた。

「また兄さんが何かやった?」

今までの胸の痛みが消え、今度は何故か鼓動が早くなる。

「・・・顔、赤いけど熱でもある?」

ひょいっと額に手を置かれた瞬間、心臓が嘘みたいに跳ね上がった。

「んー・・・少し熱い、かな。」

「そ、そ、そう!?」

「もう少しで休憩だって言ってるから、そこで弁慶さんに薬草を分けて貰おう。・・・歩ける?」

「・・・う、うん。」

「先輩みたいに無理せず、何かあったらすぐ言えよ。」

先輩・・・と言われた瞬間、鼓動が止まり、再び胸に小さなトゲが刺さる気配があった。

「じゃぁ行こうか。」

だけど、そのトゲも譲くんが差し出してくれた手に手を乗せた瞬間、あっという間に溶けてなくなった。



あたしはまだ、この感情が何だか分からない。
苦しいような、切ないような・・・くすぐったいような、この感情を





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■切な甘い10のお題■切な甘い感情=恋?
うひゃぁ〜じれっ隊・・・もとい、じれったいっ!!(笑)
恋だと気付いてないけど、何となく気になるって感じです。
多分これ、将臣くんは気付いてる気がする・・・なんとなくだけど。
ある意味これ、一番お題にピッタリしている気がするのは私だけでしょうか?
全体を通して遙か率が高いのは・・・も、諦めてください(苦笑)←これでも頑張って色々混ぜたんです(汗)