「ありがとうございました。」

「邪魔じゃありませんでしたか?」

「いいえ、とても助かりました。」

「・・・良かった。」

ホッと胸を撫で下ろし立ち上がると、固まった体を伸ばすかのように両手を上に伸ばす。

「随分長い間付き合わせてしまいましたね。ヒノエに怒られないと良いんですが・・・」

「弁慶と一緒だから大丈夫ですよ。ひとりで出てきた訳じゃありませんから。」

「・・・そうですね。」

苦笑にも似た笑みを浮かべた弁慶を見て首を傾げる。

「あの・・・何か?」

「いいえ、何でもありません。それでは帰りましょうか。」

「はい。」

足元に置いていた薬草の入った籠を取ろうと手を伸ばすと、それよりも先に弁慶の手が籠を取った。

「あの・・・」

「僕が持ちますよ。」

「え?いいですよ!

籠も小さいし中に入っているのも軽い物だから・・・そう言って、弁慶の手からそれを受け取ろうとしたら、まるで籠の代わり・・・とでも言うように一輪の花を手渡された。

「・・・頑張ってくれたお嬢さんに。」

「うわぁ・・・綺麗。」

「この花よりも薬草を摘んでいたあなたの方が綺麗でしたよ。」

至近距離でそんな風に言われて、照れない訳がない。
真っ赤になった頬を片手で仰いでいるあたしを見て、弁慶が口元を手にあて笑っている。

「弁慶・・・」

「すみません、あまりにあなたが可愛らしくて・・・」

「もぉ。」

でも弁慶に可愛いって言われて嬉しくない訳ない。
緩みそうになる口元を隠しながら、弁慶がくれた花へ視線を向ける。

「ふふ、それじゃぁ大切な姫君を奪われたとヒノエに怒られない内に帰りましょうか。」

そう言って前を歩き始めた弁慶の手を見て、ふとある事を思う。
片手に籠をふたつ抱えた、時にみんなの命を助ける手。
その手を・・・





――― つないで





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■して欲しい10のお題■つないで
本当は別のお題で弁慶を書いたんですが、あまりに暗く怖いので却下しました。
ありえそうだけど、自分で書いてて有り得ない・・・監禁弁慶なんて(汗)
という訳で、まぁある程度ありきたりで平和な話でまとめてみました(笑)