「おい、準備出来たのか?」
「もう少し待って!」
「ったく、ただそこのコンビニ行くだけだってのに、女ってのは何にそんな時間がかかるんだ?」
玄関で靴を履いた桐也が、イライラした様子でため息をついた。
「女の子には色々事情があるんです。はい、オッケー。」
「ばーか、もう女の子って年でもねぇだろ?」
「ちょっと、桐也?それはないんじゃない?」
「あーそうだった、そうだった。オマエ、頭ん中はガキだったよな。」
ははははは、と笑いながら先を歩く桐也のシャツを掴んで思い切り引っ張る。
「ぐえっ!」
「どうだ!思い知ったかっ!!」
「そ、そーいうのがガキだって言ってんだろ!」
「桐也が可愛くない事言うからです。」
パッと手を離して、今度はあたしが桐也の前を歩く。
「げほっ、ったく・・・しょうがねぇヤツ。」
「・・・はいはい、しょうがないヤツですよー。」
「ホント、馬鹿だな・・・オマエ。でも、そこが・・・可愛い。」
「え?」
不意にギュッと手を握られて、思わずその手を見つめてしまう。
普段は軽く握る程度なのに、今は・・・しっかり指を絡めて握ってくれてる。
「・・・桐也?」
「なぁ」
「ん?」
「このまま・・・散歩、行くか?」
「・・・・・・どうしたの!?」
「何だよ。」
「桐也がそんな事・・・言うなんて。」
普段なら面倒くさいとか、つまんねぇとか言うのに!!
「・・・お返し、間に合わなかったからな。」
「え?」
空いている方の手で頭をかいていた桐也の足が止まったので、あたしも足を止める。
「本当はお返しに新作のシルバーアクセサリー贈るつもりだったんだけどよ。納期が遅れて・・・間に合わなかったんだ。」
「・・・」
「だから、その代わりってワケじゃねぇけど、オマエの好きな散歩に付き合ってやる。」
「散歩、に?」
「給料日前で金もねぇから、何も買ってやれねぇけど・・・」
ほんの少し俯いた桐也の表情は本当に申し訳なさそうな顔をしてて、普段大人ぶってるけど、こんな所はやっぱりまだ子供っぽく見えて・・・可愛い。
「嬉しいよ、桐也。」
「・・・はぁ?」
「桐也がそう思ってくれた、気持ちが。」
「そ、そうか?」
「うん。」
「ははっ、なら・・・良かった。」
「それじゃぁ今日は公園一周付き合って貰おうかな♪」
「ゲッ!!」
「ホワイトデーの贈り物なんでしょ?」
「あー、分かったよ。付き合ってやるよ・・・仕方ねぇから。」
口では文句を言いながらも、先を歩き出した桐也の耳はいつも照れた時に見せるのと同じ、真っ赤に染まっている。
指を絡めてしっかり結ばれた手から伝わる熱も、ホワイトデーの贈り物・・・だね。
■ホワイトデー4■指を絡める
久し振りにデザラブやったら、意外に可愛いヤツとか思ってしまいました・・・「馬鹿」の言い方が変わってく辺りが(笑)
PCでは花屋と小説家以外簡単にスルーしてしまったので、印象に残ってなかったんですよね。
でも改めてやってみたら、うん・・・意外と可愛いぞ、コイツ♪