「あー、三蔵!」
「お前か・・・」
「うわっ・・・すっごい。制服のボタン、1個もないね。」
三蔵はボタンの取れたコートを指で掴み、制服とは言えなくなった制服に視線を落とす。
卒業式を終え体育館を出て記念撮影を終えた瞬間、同級生と下級生に囲まれ、ほぼ根こそぎボタンというボタンを奪われた。
「ったく、こんなモン貰って何が嬉しい。」
「あははは、いいじゃん。人気者って事で。」
「そういうお前も花だらけじゃねぇか。」
三蔵の学校では卒業式に列席者全員が胸に赤い薔薇をつける事になっている。
そこから憧れの先輩に薔薇を渡すという妙な習慣がいつの間にか生まれ、三蔵の隣を歩く幼馴染は薔薇の花だらけになっていた。
「なんかね。今日がちょうどホワイトデーだから、お返しの意味も込めて皆がくれたの。」
「・・・」
「あ、そう言えば今年はまだ三蔵から貰ってない。」
まるで子供が親に菓子を強請るかのように手を差し出した幼馴染の手を思い切り叩く。
「いったぁーっ!!」
「家に着くまで待て。」
「あ、待てって事はちゃんと用意してくれてるんだ。さっすが三蔵!!」
――― 他の誰でもない、お前から貰った物のお返しを・・・俺が忘れるはずねぇだろう
けれど、そんな三蔵の心中知らず、彼女はスキップしそうな勢いで三蔵の前を歩く。
「今年は何かなぁ〜♪」
両手に抱えている皆から貰った花を落とさないように気遣いながらクルクル回り始めた彼女へ、三蔵は自らの懐にしまいこんでいた薔薇を取り出し彼女の目の前に差し出した。
「何?」
「オマケだ・・・やるよ。」
「うわっ!三蔵の薔薇なんて貴重品だね!!」
「・・・先に行く。着替えたら家に来い。」
「はーい。」
元気の良い返事を背に受けながら、先に玄関に入った三蔵がホッとため息とつく。
お前は気付くか?
花の先につけた・・・金色のボタンに
今度こそ、幼馴染なんざ卒業してやる
■ホワイトデー5■卒業式
お返しは卒業式って言うより、制服のある卒業式の醍醐味?第二ボタンです(笑)
ま、あとは幼馴染三蔵が頑張れば、恋人もホワイトデーに貰えるかもね(笑)
いやはや、幼馴染シリーズの三蔵は可愛いですねぇ〜♪