「千秋?」

「なんだ。」

「今日、何の日か知ってる?」

「・・・今日?」

わざとらしく携帯電話を取り出してスケジュールを調べ始める千秋を横目で見ながら、微かな期待を胸に抱く。

「3月14日だろ・・・」

「そう!」

別に千秋から物が欲しいわけじゃないけど、でもやっぱり恋人からのお返しって・・・期待しちゃうじゃない?

「あ」

「何!?」

だからこそ、千秋が声をあげた瞬間、期待の眼差しで見上げたのに・・・彼の口から出たのは、とんでもないひと言。

仏滅だな。」

「・・・・・・は?」

「あーまぁ気にする事もねぇか。別に今日、結婚式あげるワケでもねぇしな。あはははは!」



ちょ、ちょっと待って!?
ホワイトデーって言葉、もしかしてスッキリすっかり忘れてる!?




「あ、あはははは・・・」

「って、何乾いた笑い零してんだよ。」

ビシッと額を指でつつかれて、思わず額を両手で押さえる。

「馬鹿な事やってねぇで、行くぞ。あんま遅くなると駐車料金割増しになっちまう。」

「・・・はーい。」



まぁね、期待したあたしが馬鹿でした。



気持ちを切り替えるように、はぁ〜と大きなため息をついてから千秋の側へ向かうと、不意に目の前に小さな箱が差し出された。

「ほらよ。」

「え?」

「いらないか?」

「い、いるっ!!」

視界より上に持っていかれそうになった小箱を両手で奪い取ると、ポンポンと頭を叩かれた。

「よし。受取ったからには返品不可だからな。」

「えー!?な、何くれたの?」

「さぁな。」

車に乗り込んでから箱を開けると、そこから出てきたのは・・・左手の薬指に、ピッタリの指輪。

「千秋・・・」

「ただ渡すだけなんてつまんねぇだろ。」

そういってニヤリと笑った千秋の顔は、まるで悪戯を成功させた子供みたいに嬉しそうだった。





ホワイトデーのお返しは、笑顔と幼稚な悪戯





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■ホワイトデー6■笑顔と幼稚な悪戯
幼稚な悪戯はホワイトデーを忘れたフリをしてるトコです。
笑顔は千秋のたくらみ顔です(笑)
素直にホワイトデーを渡す千秋なんて千秋じゃないわっ!と、この話を思いついた時の私は何を考えていたのでしょう(苦笑)