「もう充分だってば!!」

「なぁに言ってんだよ。まだ掃除と買物しかしてねぇだろ。」

「だから、それで充分だってば!!」

この間あたしが買った可愛いクマさん柄のエプロンを身につけながら、火の付いていないタバコを口に銜えた捲兄がため息をついた。

「お前が言ったんだろうが。バレンタインのお返しは3倍が常識だって。」

「言ったけど、それは金額の問題で・・・」

「だーから、金がねぇからこうして身体で払ってんだろ?」



――― 意味が違うってば・・・



ホワイトデーのお返しを忘れた上、金欠でお金がないから身体で払う・・・と言った捲兄は言葉どおり、朝からあたしの部屋の掃除をし、空になった冷蔵庫の中身を充実させるべく買物へ行ってくれた。買物に使った財布があたしのだってのはちょっと不服だけど、それでも捲兄の気持ちが嬉しかったからこれ以上はもういいと言って必死で止めてるんだけど、相手はまだ物足りなそう。

「これ以上は何もないよぉー!」

「それじゃぁ俺の気がすまねぇって。」

「あ、じゃぁ『気をすませる』ってのを3つ目のお願いにして!!」

「って、どこぞのランプの精の願い事と一緒にすんな。」

「うぅ〜・・・」



じゃぁどうすればいいのぉ!?
このまま捲兄にお任せすると次は・・・何?

・・・・・・洗濯とか言わないよね。



嫌な汗が背中に流れた瞬間、外を見ていた捲兄がポンッと手を叩いた。

「まだあったか。」



――― まさかっ!!



「こんな上天気の日に洗濯干さねぇなんてバカだよな。」

「ちょ、まっ、待って!!」

「安心しろ。中身の入ってないモンに興味はねぇから。」

それが何を示してるのかなんて、言わなくても分かる。
瞬時に耳まで真っ赤になったあたしは、有無を言わさず側にあったクッションを捲兄に向かって放り投げる。

「親しき仲にも礼儀ありーーーーっ!!」

「どわぁぁつ!!」





ホワイトデーのお返しは、3倍返し





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■ホワイトデー8■3倍返し
言いたい事はただひとつって感じですね。一家に一台、捲兄!以上!!(笑)
っつーのは半分冗談で、普通に3倍返しされても面白くないので、身体で3倍働いて返して貰いました。
これが現世の方だったら、ある意味仕事が増えて大変です。