「そろそろ行かないといけないんじゃ・・・」
「もう少し、こうしていては駄目ですか。」
背中に回されている手に、ほんの僅かに力が入る。
「・・・駄目、じゃないです。」
「では、もう少しだけ・・・」
「はい。」
そう返事をしてから、大好きな人の腕の中でもう一度目を閉じる。
「まさかこんな穏やかな時が、あなたと過ごせるとは思いませんでした。」
「・・・あたしも。」
「こうして抱いていないと、清らかな君は日の光に溶けてしまいそうで怖いんです。」
「弁慶にも怖い物あるの?」
「えぇ、ありますよ。」
「何だか不思議・・・」
「ふふ・・・」
誰が来るかも知れない部屋の一角で、壁を背に寄りかかる弁慶に抱きしめられている。
ただ、それだけなのに・・・まるで睦言のように思えるのは何故だろう。
「怖い物って聞いてもいい?」
「知りたいですか?」
閉じていた瞳を開け僅かに顔をあげれば、今まで肩口に額を乗せていた弁慶が笑顔であたしを見つめている。
普段、容貌を隠すように被っている黒衣は床に落ちていて、その表情を隠すものはなにもない。
「・・・はい。」
「そんな風に上目遣いで可愛らしく頷かれると、さすがの僕も素直に言ってしまいそうになりますね。」
「教えてくれないんですか?」
「・・・今はまだ、秘密です。」
自らの唇に指を当て、その指であたしの唇を押さえた。
指先が触れ合う、優しく甘い・・・キス
「こんな場所では誰が聞いているか分かりませんからね。」
「っ!」
「今度、二人きりの時、君だけに教えてあげます。だから今は・・・ようやく手に入れた、愛しい君の温もりをもう少し感じさせて下さい。」
「弁慶・・・」
再び弁慶の額が肩口に乗せられ、いつの間にか腰に回されていた手がしっかりと身体を抱きしめていた。
「想いが通じた相手との抱擁が、こんなに気持ちのいいものだとは・・・思わなかったんです。」
■ホワイトデー&迷宮発売記念2■抱擁
きゃぁ〜っ!!弁慶ぃ〜っっ!!こんな弁慶大好きっ!
白も黒もなく、初めて感じる幸福に酔ってるような?甘えてるような?弁慶大好きっ!!
ちなみに秘密ですって台詞は迷宮のサンプルボイスを参照して下さいね(笑)
ちなみにこのお題が1番多かったです。