「神子様にお伺いしました。」
「何を?」
「本日は神子様の世界で言う、ほわいとでーという日なのだと。」
「あ・・・うん。そうだね。」
「そして、ばれんたいんという日に物を頂いたら、そのお返しをする日・・・だとも伺いましたが、本当ですか?」
「あ・・・うん。」
膝をついた銀が顔を覗き込むように尋ねて来たので、思わず素直に頷いてしまった。
「・・・申し訳ありません。」
「銀?」
「泰衡様の一郎党である私には・・・貴女に差し上げられる品が、ございません。」
「そんなの気にしな・・・」
「いいえ、そうは参りません。私の大切な方が心を込めて下さった物に、お返しをしないなど以ての外。」
だ、駄目だ・・・こんな風に銀が言い始めたら、何を言っても聞いてくれない。
「早急に御用意いたしますゆえ、暫しお待ち下さい。」
「あの、銀!あたし・・・あっ!!」
歩き出した銀を追いかけようと立ち上がった瞬間、足元の石に躓いてしまった。
顔から地面にぶつかるのを避けようと両手を前に伸ばしたけれど、その手が地面に触れる事は・・・なかった。
「大丈夫ですか。」
「・・・銀。」
「この辺りは足場が悪うございます。宜しければ私の手にお掴まりください。」
「う、うん。」
また躓いて銀に心配をかけるのも悪かったので、言われたとおり手を取ると、軽く手を握られた。
「・・・差しあげる物が、見つかりました。」
「ほぇ?」
突然の発言に首を傾げていると、銀があたしの手の甲に唇を寄せた。
「!!」
「私を、貴女に差し上げます。」
「え・・・えぇー!?」
「この腕も、唇も・・・全て貴女様の物。」
「だ、だって銀は泰衡さんの・・・」
「はい。私は泰衡様の物にございます。ですが、今、貴女のお側にいる時は・・・貴女様だけの物になりとうございます。」
「・・・銀。」
手を掴んだまま、まっすぐあたしを見てくれる銀。
今、ここにいる間は・・・あたしだけの銀になってくれるという。
そんな彼の想いに、応えたい・・・そしてキチンと受け止めたい。
「じゃぁ・・・銀。」
「はい。」
「あたしの・・・・・・」
突然吹いた風が言葉を攫ってしまったけれど、銀の耳には届いたらしい。
「・・・貴女様のお望みのままに。」
■ホワイトデー&迷宮発売記念5■真っ直ぐな心
相変わらず・・・口調の難しい男ですな、銀。
私の口調が適当なので、丁寧な言葉はとても難しいです(苦笑)
それでも自分自身をプレゼントだと言っちゃう銀も凄いよね。
風に邪魔された言葉は「側にいて」です。銀が側を離れちゃうのが嫌だったんです。