「うわぁ・・・」
「本来であれば星が良く見える場所なのだが、生憎今日は曇っているようだな。」
「でも凄いです。こんな風に空が広がって見えるなんて・・・」
「少しでもお前の気晴らしになればと思ったのだが、無駄足だったな。」
僅かに眉間に皺を寄せてしまった先生の手を掴んで首を横に振る。
「無駄足なんかじゃありません。先生とこうして一緒にいられるだけで、あたしは凄く幸せです。」
「・・・」
「それに先生の気遣いも凄く嬉しいです!!」
上手く言葉に出来ないけれど、先生の気持ちが嬉しいのは事実。
だから一生懸命思いを伝えようとするけど、言葉が・・・出てこない。
「だからっ・・・」
「・・・もういい。充分お前の気持ちは分かった。」
「先生・・・」
「・・・本当はお前に礼をするつもりだったのだ。」
「礼?」
「今日はほわいとでーなのだろう?」
――― 先生、知ってたの!?
「神子が私に教えてくれた。そしてお前に贈り物をすれば喜ぶ、という事も。」
「・・・先輩ってば。」
別に何か欲しいからバレンタインに先生に物を贈ったわけじゃないのに・・・と、思いながらも、先生がそれを気にしてくれたという事実が嬉しい。
「だからここへ連れて来たのだが・・・お前に贈るべき星空がなかった。」
「・・・」
心から残念そうな顔をしている先生に何を言えばいいのか分からず、視線をそらすように空を見上げたあたしの目に、ある物が映った。
「さぁ、もう帰ろう。皆が心配する。」
「先生!上、上見て下さい!!」
「?」
「雪が降ってきました!!」
今まで真っ暗だった空から、僅かだが白い雪がちらほらと降ってきた。
「・・・名残雪、か。」
「名残雪?」
「春が近いというのに、冬を思わせるように降る雪のことだ。」
「じゃぁこれは先生が降らせてくれた、最後の雪ですね!」
「私・・・が?」
「はい!」
両手を広げて目の前に降る雪をそっと手の平にのせると、手の温もりであっという間に雪が溶けてしまったけど、あたしはその溶けた雪を手にのせたまま先生へ振り向くと、笑顔でお礼を言った。
「素敵な雪の贈り物ありがとうございます、先生。」
「私は・・・」
「こんな素敵なお返し、あたし貰った事がありません!」
笑顔でそう言うと、もう一度贈り物を受取ろうと手の平を空へ向ける。
すると背後から先生の手が伸びてきて、あたしの手をそっと握った。
「先生?」
「・・・このような物でもお前は喜んでくれるのか。」
「はい。」
「では、今暫く・・・私からの贈り物を、共に受取ってくれるか。」
「・・・はい。」
■ホワイトデー&迷宮発売記念6■雪
先生は口数が少ないので書きにくいです(苦笑)
でもあの包み込んでくれるような大きな頼れる存在に憧れてしまいます。
先生の贈り物は星空だったんですが、曇っていたので少し落ち込んじゃったようです。
その後降ってきた雪を贈り物と言ってくれたヒロインに心打たれる先生って感じの話です。雰囲気だけですね(苦笑)