「ほらよっ!」

「え?何ですか、これ?」

「何って、お前。今日はホワイトデーだろ。」

「あ」

最近バタバタしていて今日がホワイトデーだなんて忘れてた。

「先輩、覚えていてくれたんですね。」

「そりゃまぁバレンタインデーの時、あんだけ望美と一緒に念押されりゃ忘れたくても忘れられねぇよ。」

「あはは・・・」

そう言えば望美先輩と一緒に一日中お返しお返しって騒いでいたんだっけ。

「ありがとうございます。えっと・・・開けてもいいですか?」

「あぁ」

ドキドキしながら少しくたびれた紙袋を開けると、出てきたのは一通の封筒と・・・のど飴

「・・・将臣先輩にロマンチックを期待したあたしが馬鹿でした。」

「あのなぁ、ホワイトデーっつーのは気持ちの問題だろ?お前最近ずっと咳してたからな。それでも舐めとけ。」

先輩、あたしの具合悪いの気付いてくれてたんだ。
そう思うと何処にでも売っているのど飴が、不思議と特別な物に思えてくる。

「じゃぁ後で頂きますね。こっちの封筒は手紙ですか?」

「さぁ、どうだろな。」

何か企んでいるようなニヤリとした笑みを見て、封を開けようとしていた手が止まる。

「・・・まさか肩叩き券とか入ってないですよね?」

「俺は小学生のガキかっての。」

「先輩ならありえそうじゃないですか?」

「んな事言うなら返せ。」

「貰ったのはあたしです。返しませんっ!」

伸びてきた将臣先輩の手から逃げながら封を開けると、中から出てきたのは一本の鍵。

「これ、何処の鍵ですか?」

「俺の・・・家。」

・・・えーっ!?



家って、家って・・・まさか先輩の家の鍵!?
って事はあの大きなお家にこの鍵があればいつでも自由に入れるって事!?
でもそしたら家宅侵入罪とかで捕まっちゃわない!?



そんな風に勝手に暴走するあたしの頭を先輩が軽く叩いて、ようやく暴走しかけていた思考が止まった。

「おいおい俺の家って言っても実家じゃねぇよ。俺のアパートの鍵だ。」

「アパート?」

「高校を出たら家を出るって話はしたよな。」

「はい。」

「もう契約はすませて、あとは引越しするだけだ。」

少し俯き加減で話をしていた先輩が顔を上げて、まっすぐあたしの目を見た。

「・・・お前に、それを持ってて欲しい。」

「先・・・輩」

「ついでに。学校出たら、俺はもう先輩でも何でもねぇぞ?」

「え?で、でも・・・」



先輩じゃなくなったら何て呼べばいいの?
あたしみたいな鬱陶しい後輩は、嫌いって事?



「おいおい、また変な事考えてんじゃねぇだろうな。」

「ほぇ・・・」

「俺の家の鍵持ってんだ。だから、今度からは先輩じゃなくて・・・将臣って呼べよ。それが・・・お前の気持ちに対する返事だ。」

「・・・・・・は・・・はい。」





ホワイトデーのお返しは、告白の返事





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■ホワイトデー&迷宮発売記念7■告白の返事
最近赤丸急上昇の将臣です。どうも私はお兄ちゃん属性に弱いみたいですね(苦笑)
これは現代に帰って来てからの話って感じです。
ホワイトデーのお返しは合鍵が本命で、のど飴は照れ隠しです(笑)
可愛いなぁ〜将臣ってば!でもやってる事は結構凄いです。