「本当にごめんね。」

「そんなに謝らないで下さい!」

「でも折角だからお礼、したかったなぁ〜」

皆で山を越えている中、隣を歩く景時さんが大きなため息をついた。

「仕方ありませんよ。日程をずらす訳にもいきませんし。」

「だけどさぁ・・・」

「あんまり言ってると他の人に変な風に見られちゃいますよ、戦奉行殿?」

「やだなぁ、やめてよ君までそんな風に言うの。」

「あはははは」

景時さんが考え込まないよう、わざと明るく言ったつもりだけど、それでも景時さんの表情から影は消えない。

「でもさ、オレ、本当に君に何か贈り物したかったんだ。」

「その気持ちで充分です。」

「気持ちだけなら毎日でも君に贈ってるつもりだよ。何か、その・・・目に見える物をあげたいって思ったんだ。」

「景時さん。」

前方で何かあったのか皆が足を止めたので、あたしと景時さんも列よりほんの少し後ろで足を止める。

「それだけ、君の贈り物が嬉しかったんだ。」

「・・・」

「いや、ほら、最近ずっと戦ばかりで、贈られる物と言えば手柄を称えて贈られる物だろ?」

「はい。」

「・・・好意で贈られる品があんなに嬉しいなら、同じくらい嬉しい物を君にあげたいなぁって思って、さ。」

「・・・」

少し照れたように頬を指でかく景時さん。
その姿を見て、ふとある事を思いつき躊躇いがちに声をかける。

「あの・・・ひとつお願いしてもいいですか?」

「オレに?」

「はい。今、欲しい物が・・・思い浮かんで・・・その・・・」

「え?何それ?オレが今すぐ用意出来る物?」

嬉しそうな笑顔を見せてくれた景時さんの服を軽く掴んで腰を屈めて貰い、その耳元にある事をおねだりした。

・・・くれますか?

「・・・え?」

「小さな子供のお願いみたいに思われるかもしれないんですけど、あの・・・少しでもあたしが頑張ってるって景時さんが思ってくれてたら。」

「そんな事で・・・いいの?」

「あたしには凄く嬉しい事なんです。それに・・・」

「それに?」

「・・・こんな風に人におねだりするの、初めてなんです。」

こっちの世界に来て自分から進んで何かをねだるのは初めてで、何だか凄く恥ずかしい。
寒さの所為じゃなく頬が赤くなってしまったのを隠すように少し俯けば、大きな手が優しく頭を撫でてくれた。

「君は凄く頑張ってるよ。オレは・・・いつも頑張ってる君が、大好きだ。」

「景時さん・・・」

「オレでいいなら、いつでも君をこうして撫でてあげるよ。」





ホワイトデーのお返しは、頭ナデナデ





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■ホワイトデー&迷宮発売記念8■頭ナデナデ
疑問としては、途中で立ち止まってこれやってるんですよね。
絶対周囲の皆が見てると思うんですが(笑)
朔ちゃんのため息とか、怒ってる九郎と宥めてる弁慶とか、からかうネタをゲットしたと思ってるヒノエが脳裏に浮かびます(笑)
でもこんな一生懸命な彼、大好きです♪