「敦盛さん?どうしたんですか。」
「・・・」
敦盛さんに呼ばれて庭に来たけど、さっきから何か言おうとしては言葉を飲み込んでばかり。
「いいお天気ですね。」
敦盛さんから話出してくれるのを待とうと、縁側に座って空を見上げる。
久し振りののんびりした時間を、大好きな人と過ごせるって幸せだな。
敦盛さんもあたしと一緒にいて少しでも楽しいって思ってくれると嬉しいんだけど・・・。
そう思ってチラリと視線を向けたら、敦盛さんとしっかり目があった。
「「!!」」
思わず視線をそらして反対方向を向く。
び、びっくりした・・・あんな風に優しい表情してるなんて思わなかった。
ドキドキする胸を押さえながら、それでもさっき一瞬だけ見せてくれた敦盛さんの笑顔が忘れられなくて・・・ううん、もう一度見たくて顔を上げる。
けれどそこにあったのは背中を向けてしまった敦盛さん。
「・・・」
ちょっと残念だなって思ったけれど、それも敦盛さんらしいなって思った。
そのまま敦盛さんがまたこっちを向いてくれるのを待っていると、小さな声が聞こえた。
「わ、私は・・・」
「はい?」
「・・・色々考えたのだが、貴女に贈れる物が・・・ない。」
「・・・え?」
あたしが疑問の声をあげたのを聞いて、少しだけ不安そうな顔をした敦盛さんが振り返った。
「今日はほわいとでーなのだろう。ばれんたいんに貰った品に対するお返しをする日だと聞いたのだが・・・違うのか?」
「あ、いえ。違いません、けど・・・」
「・・・そうか。ではやはり私は貴女から品を受取るべきではなかった。」
どうしてそんな話になってるんだろう。
「敦盛さん・・・」
「すまない。私が知らなかったばかりに・・・」
さっき垣間見えた笑顔はもう何処にもない。
何処か辛そうな顔をして俯いている敦盛さんは、謝罪するかのように頭を垂れる。
「次からは気をつける。本当に・・・」
――― そんな顔がみたいんじゃないっ!!
「違います!!お返しなんていりません!!」
「・・・?」
「お返しが欲しくて敦盛さんにバレンタインのプレゼントをあげたんじゃないんです。あたしはただ、敦盛さんが好きで、敦盛さんの笑顔が見たかっただけ・・・」
そこまで一気に言ってから、自分が何を言ったのか理解して慌てて両手で口を押さえる。
「それは・・・」
「あ、あのっ、そのっ、あ・・・あたし・・・」
今すぐここから逃げ出したい・・・でも、そんな事をしたら敦盛さんが傷ついてしまうかもしれない。
どうしていいか分からなくて泣きそうになるのを必死で堪えていたら、遠慮がちに私の名を呼ぶ声が聞こえ・・・ゆっくり顔をあげた。
そこにあったのは、さっき垣間見えた優しい笑みを浮かべた敦盛さん。
「・・・貴女はいつも私が喜ぶ言葉をくれる。」
「敦盛・・・さん。」
「怨霊の身である私には何も贈るべき物はないが、貴女が好きだと言ってくれるのならば・・・まだこうして心から微笑む事が出来ると知った。」
「・・・」
「貴女に、心からの礼を・・・そして、来るべき時が来るまで側にいると、約束・・・する。」
■ホワイトデー&迷宮発売記念9■あなたの心からの笑顔
ヤバイ・・・あっちゃん、意外と可愛く仕上がってしまったぞ!?
ちなみに最後の笑顔は熊野で「おやすみなさい」を言った時の恥じらい気味のあっちゃんの笑顔でお願い致します。
見事なほどじれったいのに、あっちゃんは無問題で可愛いと思える自分に苦笑(笑)