「海だーっ!」

「やっぱり人多いですねー」

シートを広げて荷物を乗せている間に、火原先輩がパラソルを立ててくれた。

「あーもーすぐ飛び込みたくなっちゃうね!」

「準備運動しないと、足つっちゃいますよ?」

「あっ、そっか…じゃあ、ちゃんとしないとね」



…本当にこのまま飛び込みに行きそうだ。
先輩、足がつっちゃったりしたらどうしよう。



そんな事を考えながら、ぼんやり座り込んでいたら、急に両手をつかんで引っ張られた。

「わっ!!」

「ほらほらっ、ちゃん準備運動するよ〜!はいっ、いっちに、さんし、ごーろく…」

「火原先輩っ!か、かけ声は…」

ただでさえ良く通る先輩の声は、周囲の人たちの…なんとも言えない視線を集めてくれる。
シャツを着てるとはいえ、今は水着だから出来れば静かに、というのは無理な話だろうか。

「しっちはち…こうやって声かけて、みんなでやった方が楽しいじゃない」

「え…」

気付けばすぐ側にいた家族連れの小さな子が、先輩の真似をして一緒に体操をしてる。

「…ね?」

「そうですね」

あぁ、こういう所が火原先輩だなって思う。
自分だけじゃなく、周りの人まで笑顔に出来る…素敵な力。





ラジオ体操第二までやりそうな勢いで準備運動を終え、いよいよ海へ…

「さっ!行こう!!」

「あ、待って下さい」

日焼け防止に着ていたシャツを脱ぎ、軽くたたんでから先輩の方へ振り向く。

「お待たせしまし……せ、先輩?」

今まで笑顔で海に向かって駆け出そうとしていた火原先輩。
それが今は、真っ赤な顔をして…硬直してる。

「え、と…」

に、似合わなかった?
やっぱりこんな色じゃなくてもっと落ち着いたタイプにするべきだった!?
あああっ火原先輩と思い切り遊ぶなら、ショートパレオじゃなくて、やっぱりショートパンツがついてるのにすれば良かった!?

ぐるぐると色々な感情が巡りつつ、取り敢えずシャツをもう一度着ようとしたら、大きな声が聞こえてきた。

「かっっ、可愛いっ!!

「え」

「あのっ、その…すっごく、似合ってて可愛い…よ」

太陽にも負けないくらい赤い顔で、青い空をバックに微笑んでくれる先輩を見ていたら…少し前の、不安や恥ずかしさが一気に消えていった。
今度は自分から火原先輩の手を取って、目の前の海を指差す。

「泳ぎましょう!先輩!」

「う、うんっ!!」





大好きな先輩と過ごす夏
この砂浜にいる誰よりも、幸せな時間を過ごしている気がする。





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2008web拍手、名前変換入れて手を加えて再録。
火原先輩と夏の海ってのは…いやぁ、物凄く似合いますよね。
海に入るまでは、パーカーとか羽織ってるから、まだなんとか(なんとかがポイント)大丈夫なんだけど、泳ぐ時に脱いだら絶対顔真っ赤にしてくれると思います。
それが可愛いタイプだろうが、綺麗タイプだろうが、どっちにしろ赤くなる。
そんな先輩がとても癒されて大好きです(笑)
本当に火原先輩と一緒だと、幸せになれる気がします。