「うぁ…間に合わなかった…」
降りだした雨空を見て呟くと、ぽんっと肩を叩いた人がいた。
「ちゃん?」
「火原先輩…」
「あれ、なんか困った顔してるけど…どうかした?」
「えーと、実は…」
無言で目の前の空を指差すと、火原先輩もその先へ視線を向けた。
「あー、雨…もう降って来ちゃったんだ」
「そうなんですよ。雨の確率50%だったから大丈夫かなぁって思って傘持って来なかったんですけど、タイミング悪く降りだしちゃって…」
「あっちゃー…おれもだよ」
しまった…って顔をしつつ、隣に並んだ先輩も空を見上げる。
暫くそうやって二人で空を見上げていたけれど、一度降りだした雨が止む気配はない。
「うーん、止みそうにないね」
「…やっぱり、そう、ですよね」
こうなったら、濡れて帰るしかないかな…と考えていたら、隣からぽんっと手を叩く音が聞こえた。
「あっ!おれ、いいこと考えた。あのさ、荷物見ててくれる?」
言うが早いか、肩にかけていた荷物を置いて火原先輩が走り出した。
「あ、あの火原先輩!?」
驚いた声に足を止めた先輩が、思いついた"いいこと"を教えてくれる。
「用務員さんに傘、借りてくる!」
「…え?」
「大丈夫、すぐ戻るから!」
そう言うと、今度こそ先輩は振り返ることなく廊下を走って行った。
まだ学校に残ってる友達や職員室に残っている先生に…というのではない。
「…よ、用務員さんに借りるとか、凄い裏技」
きっと、そういうことが出来るのは火原先輩だから…なんだろうな。
空を見上げても雨足が弱まることはない。
でも、もうすぐここに…優しい太陽がやって来る。
眩しい笑顔の、大好きな先輩が…
2009web拍手、名前変換入れて手を加えて再録。
火原先輩がいるだけで、じめっとした空気も吹き飛ぶ気がします。
等身大…というか、一番高校生らしいというか、成長が見られる素晴らしい人だと(笑)
だがしかし、あの人の頭とかにたまに柴犬っぽい耳が見えるのは気のせい、かな。
ついでに尻尾も見えるよね…絶対(絶対とか言った)