「金やん!」

「うぉっ!?」

どんっと勢い良く背後からぶつかってきた何かに思わず前のめりになる。
振り返る事無く、腰に張り付いてる人間の頭をぽんっと叩いてため息をついた。

〜…お前さん、もし人違いだったらどうするつもりだ?」

「あたしが金やん間違えるはずないもん!」



全く、どこから来る自信なんだか…



とりあえず、腰に巻きついて横から顔を出しているの頭をつつく。
こんなとこ保護者に見られたらマズかろう。

「ほれ、離れろ」

「えー?」

「あのな、お前さんいくつだ」

「えっと…」



――― 真面目に指折り数えるなよ…



「周りに笑われてるぞ〜?」

「はっ?!」

こんなやり取りを見ている周囲の人間の微笑にようやく気付いたのか、慌てて俺から離れた。

「もっと早く言って!」

「…」

真っ赤になったが、足早にその場から離れるのを笑いながら追いかける。

「おいおい、お前さんが離れなかったんだぞー?」

「そうだけどーっ!!」

ったく、可愛いねぇ…
くっくっと自然と零れる笑みを隠そうともせず、少し歩幅を広げての横に並んだ。

「で、迷子か?」

「違うもん!」

「じゃあなんだ?」

ぴたりと足を止めたが、ちらりと俺を見て呟いた。

「…お散歩」

「そりゃまた、ご苦労さん」



ほーお前の散歩は、休日に随分と遠くまで来るんだな。
やれやれ、やっぱ若人は体力が違うな…


なんて、言ってやりたい所だが、今日の俺は気分がいい。

「おい、

「何?」

「時間あるなら、どっかで茶でも飲むか。奢ってやるぞ〜」

「ホント!?」

「あぁ」

あるっ!いっぱいあるっ!!」

「どこか行きたい所あるか?」

「えっと、えっと…この間出来たばっかのクレープ屋さん!!」

目を輝かせて告げた行き先は、ここから徒歩15分くらい離れた場所にあるカフェ。

「そうかそうか。だが、残念ながら聞いただけだ」

「ほぇ」

「そこのカフェに行くぞ〜」

「えぇぇ!?」

容赦なくを追い越して前を歩く。

「聞いただけって!?」

「言葉通り、聞いただけ、だ」

「酷いーっ!!」

「そんなこと言うと、奢ってやらんぞ?」

「う、それは嫌ーっっ!!」

ぱたぱたと近づいてきた足音。
そして、遠慮がちに袖を掴む手。

「ね、金やん、金やん。ケーキも食べていい?」

「あぁ、いいぞ」

「やったー!!」



たまたま、天気がいいから学校近くまで足を伸ばした。
そうしたら、散歩中のお前さんが、いた。

こんなに嬉しいこと、早々なかろう…な、





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ゲームの中でも言われたんですよね。
「お前さん、どこに行きたい?」って。
ほんで、素直に答えたらば…聞いただけだ、と(苦笑)
既に行き先は決まってるのに聞くな馬鹿ーっ!!
とか思いながらも、そんな金やんが大好きな自分に苦笑。
どうして私はこう、大人のくせしていたずら好きな人が好きなんでしょうか?
…結城さんも、そのパターンよねぇ(笑)