鼻歌を歌いながら、目をつけておいた昼寝場所へと向かう。
「…っと」
だが、木陰に吊るされたハンモックには…既に先客の姿があった。
「…先を越された、か」
やれやれと頭をかきながらゆっくり足を進めると、気持ち良さそうに眠っている人物へ顔を近づけ声をかける。
「おーい、…」
けれどそれは起こすつもりが全くない…といってもいいくらいの声量で、なんのために声をかけたのかわからなくて苦笑する。
「…起きるわきゃない、な」
僅かに開いた唇から寝息が洩れ、深い眠りについているのだと気付く。
そばの木に寄りかかりながらその様子を眺めていると、視界の端にある物が目に付いた。
「…」
躊躇う事無くそれに手を伸ばし取ると、それをそのまま眠っているの耳元へと差し込んだ。
――― 夏の日差しに映える艶やかな花
「ははっ…似合うじゃないか」
ちょっとした悪戯心のつもりだったが、予想外に似合って思わず笑みが零れる。
そのまま頭を撫でてやると、楽しい夢でも見ているのか…眠り姫の表情(かお)がほころぶような笑顔に変わった。
つられるように口元が緩んだのを隠すように、自分の口元を押さえる。
その反面、妙に胸を締め付けられる感覚になり…誰に言うでもなく、ぽつりと呟いた。
「…なぁ、」
相手が、眠っているからこそ…
聞いていないから、こそ…
口に出来る、言葉
「お前さん、俺なんかで…いいのか」
いつも隠れるように会って
秘め事のように、肝心なことは口に出来ない
高校時代…という、大切な時間を…
二度と、訪れないこの時を……
「…俺なんかと、過ごしても面白くなかろう。……なぁ、」
ポツリと零れた言葉だからこそ、真実味が溢れる。
まったく…本当に俺は、駄目な大人だ。
「んっ…」
覚醒が近いのか、僅かに彼女の睫が震えはじめた。
情けない男の顔を呼吸ひとつでしまい込み、目覚めそうになっているへ顔を近づける。
「ん〜…」
「…おはよーさん」
「おは、よ…金や……って、ふぎゃぁあああ!?」
鼻先が触れそうなくらい顔を寄せていた事に驚いて上がる悲鳴に負けないくらいの声を上げて笑ってやる。
「あははははは」
「びっ、びっ、びっくりしたーっ!!!」
大人ってのは、元来ずるいもんだ
自分の都合で、物事を動かすことが出来る
それに付き合わされる相手は不憫かもしれんが…
…もう少し、その笑顔を見させてくれ
お前が、夢から覚めるまでの間で…構わないから…さ
何度かリテイク…書き直した話です。
元ネタは言わずもがな、ネオロマライブ2008Summerです(笑)
やっぱりというか、予想通りというか…愛のメッセージが昼夜に分散していたので、両公演みたおかげで、金やんのメッセージを聞く事が出来ました。
いや、もう…嬉しいったらありゃしないっ!!
生でお前さんが聞けて、ちょっとした小物使いまで見れて…文句ありませんっ!
早くDVDでもう一度ちゃんと見たいです。
…そして最近、目の錯角というよりも石川さんに向かってうっかり「金やん」とか言う回数が増えています(苦笑)