――― ど、どうしよう…
陽射しが温かいから…と、散歩していて見つけてしまった、既に学校名物とも言える、彼。
気持ち良さそうに眠っているから、そのまま寝かせてあげたいところだけど…秋の空気は日が沈めば一気に身体を冷やしてしまう。
「うぅ…やっぱり、声かけてあげた方がっていうか、かけなきゃダメだよね」
なんであたし、今日に限って上着持ってこなかったんだろう。
別にそれが悪いわけじゃないんだけど、なんとなく後ろめたい気持ちになりながら芝生で寝ている彼の横に膝をついて軽く肩を叩く。
「志水くん」
「…」
声をかけても、全く起きる気配…なし。
「志水くん?」
「…」
――― 反応、なし
起きてくれなきゃ、折角の覚悟も無駄になる。
心を鬼にして、さっきよりも声を大きくして肩を揺する。
「志水くん!!」
「ん…」
肩を揺する衝撃が効いたのか、長い睫がピクリと動いて、重い瞼がゆっくり開いた。
「…志水、くん?」
「あ、……せん…ぱい?」
「おはよう、志水くん」
「……おはよう…ございます」
いつもどおりのゆっくりした口調、少ない口数。
「寝てるところごめんね」
「…僕、寝ていました?」
「う、うん…」
「僕…本を読んでいて、それで…あ、背中が温かくなって気持ちよくなったから…寝てしまったんですね」
…相変わらず、マイペースだなぁ
「本って、これ?」
傍に置いてあった本を手に取ると、返事の代わりに、こくりと志水くんの首が前に倒れた。
「あ、これ…図書室の新刊だね」
「はい…ずっと入荷を待っていた本、なんです」
「へぇ…」
ぱらぱらとめくっていると、ちょうど自分が今調べている曲が目に飛び込んできた。
…あ、これ…今までにないこと、書いてあるかも。
それに、この本…読みやすい。
「ねぇ、志水くん。よかったら………ふぇっ!?」
読み終わったら、この本、貸してくれるかなって聞こうと思ったあたしの声は、引っくり返った妙な音となってしまった。
だって、だって…振り返ったら、志水くんの頭があたしの膝の上にあるんだもんっ!!
「ちょ、あの…」
「…温かい」
「し、志水くん!?」
「…すぅ…」
「…………」
まるで某アニメに出てくる主人公のように、あっという間に夢の世界へ旅立ってしまった志水くん。
先程までの昼寝で冷えていたのか、あたし自身で暖を取るように両手を腰に回して眠っている。
「ど、どうしよう…」
困惑しつつ、起こそうか…と手を伸ばしかけても、こんっなに気持ち良さそうに眠ってる天使を起こすなんてこと、出来るはずがない。
太陽の位置を確認し、あと少しは…この陽だまりが動くかないことを確認する。
「…陽だまりで読書、も…たまにはいいかな」
そんな呟きに応えてくれるのは、彼の小さな寝息だけ。
可愛らしい天使の寝息を聞きながら読む本は ――― 名曲の旋律
志水くんだから、許される行動…パートいくつか(笑)
だって、志水くんが膝で寝てたら起こせないじゃないですかっ!
…可愛くて。
最初は音楽オンチヒロインで書きかけてたんですが、名曲の旋律をそんな人間が読むはずなかろう!と(苦笑)
そういうわけで、こんな風になりました。
きっと志水くんが目覚めるのは30分後くらいです。
何故って、足が痺れたヒロインが、微かに震え始めるから(笑)