実家から送られてきた菓子を、職員室で配ろうと立ち上がった瞬間、一番見つかっちゃいかんヤツと目があった。
「げ」
「あ、金やん!」
どうしてお前がここにいる…火原
慌てて隠そうとしたが、食い物に目ざといヤツをごまかすには至らなかった。
「それ、前にも持って来てた饅頭だよね?」
「お前さん、そういう記憶力だけはあるんだな」
「おれさ、今、すっげー腹減ってるんだよね!」
「あーそうか。だったら購買でカツサンドでも買って来い」
「もう放課後だよ?売り切れてるに決まってるじゃん」
「じゃあ、他のパンを買って飢えをしのげ」
そう言いながら、火原から箱を遠ざけようとした瞬間、入口から別の声が聞こえてきた。
「失礼しま…あ、金やん!火原先輩!」
見つかっちゃマズイヤツ、パート2ってか…
「ちゃん!ちゃん!お饅頭だよ」
「え?お饅頭!?」
火原の声を聞いて、日誌を抱えたままが俺の方へやって来た。
「あー、これ前に貰って美味しかったやつ!」
「そうそう!」
「甘さ控え目のこしあんが凄い美味しくて!」
「皮が凄い薄くて、ひと口で食べれてうまいよねっ!」
「うんっ!」
二人で饅頭の箱に手をかけながら、感想を述べている姿を見てため息をつく。
お前さん達、その記憶力をもう少し勉強に生かしたらどうだ?
「これは、先生方に配るんであって、生徒に配るもんじゃない」
「「えーーー」」
ハモるなよ…
「でも、余るでしょ?」
「うん、余るよね」
断定するなよ…
「「余ったらちょうだい?」」
台詞だけじゃなく仕草まで同じってのは、ちょっと凄いな…っと感心してる場合じゃない、か。
このままじゃ本当に饅頭が奪われちまう。
二人に取られないよう、片手で箱を押さえながら机の引き出しを開け、ある物を取り出す。
「ほれ。これをやるから、箱から手をどけろ」
「あーっ!これ!!」
「?」
「この間テレビでやってたメロンパン!」
「たまたま貰ってな。これでよけりゃやるよ」
そう言って二人の前に差し出せば、あっという間に箱から手は離れ、逆に手のひらを上にして今か今かとパンを待っている。
なんっつーか…
お手、とか
オアズケ…とか言いたくなる体勢だな。
とはいえ、職員室で遊ぶわけにはいかん、な。
「…ほらよ」
「「ありがとう、金やん!」」
お前さん達、本当は生き別れの兄妹…とかじゃないよな?
ここまで同じだと、さすがに何かの繋がりを感じるぞ。
だが、ま、饅頭は守れたから…よしとするか。
椅子に座って、少なくなった茶を飲んでいると、ふとが声をあげた。
「あ!中にクリームが入ってる!!」
「え?おれ、入ってなかったよ!?」
半分食べたのパンを覗き込む火原の手に、もうパンはない。
「ほー、良かったな、。そりゃアタリだ」
「やったー!アタリ〜♪」
笑顔でメロンパン(クリーム入り)を食べるを見ながら、火原は悔しそうにそれを見ていた。
「おれも食べたかったなぁ」
「お前さんはハズレだから、諦めろ」
「金やん!もう1個頂戴!」
「ばーか、もうないっての」
差し出された火原の手を軽く叩くと、そのままドアを指差した。
「食ったらとっとと練習に戻れ。で、はちゃんと日誌を先生に渡して来い。待ってるぞ?」
「「はーい」」
再び声を揃えた二人が、それぞれの目的地へと向かいだしたのを見ながら、机の上に忘れられたパンの入っていた袋を握りつぶす。
買ってきたメロンパンは2つ
見た目はまったく同じだが、ひとつだけ…袋にしるしがつけられていて、それがクリーム入りメロンパンだ。
可愛い生徒に変わりはないが、やっぱり俺にとってお前さんは…特別、だからな。
少しだけ贔屓、しちまった。
「やれやれ、放課後食おうと思ったんだがな…」
火原が来るとは、予想外…だな。
放課後、お片づけに来てくれるであろうヒロインの為に用意してくれてたんです。
普通のと、クリーム入のヤツ。
で、どっちがいいかって選ばせて、普通のに当ったら、もう片方もあげる予定だったんです。
ちゃんと用意してくれてるあたりが大好きですっ!!
…って、自分で考えて書いてるのに、そういう台詞を言うのはどうだろう(苦笑)
ちなみに、私は今でも火原先輩属性だと、自分を思っています。
なんかこー…繋がりというか、同じものを感じます(笑)