「…37.7分」
「おい、。氷貰ってきたぞ」
「あ、ありがとう千秋」
「大丈夫思うとったんやけどなぁ」
「蓬生。こいつを残して行くから、どんな手を使ってでもいい。明日までに熱を下げろ」
「鬼部長やねぇ…」
千秋が貰ってきてくれた氷水で冷やしたタオルを蓬生の頭に乗せ、出て行こうとした千秋に声をかける。
「ちょっと千秋、明日までってそんな無茶な」
「おっと、お前が何を言っても今回は聞かないぜ。明日の予定はお前も知ってるだろう」
「…………知って、ます」
「だったら、あとは任せる。その代わり今日だけ男子寮…いや、この部屋にいられるよう如月に話をつけといてやる」
え、なに…あたし、男子寮にいられるの!?
っていうか、蓬生のそばにいてもいいの!?
そんな想いが顔に出ていたのか、意地悪そうに笑った千秋が耳元に顔を寄せ、囁いた。
「余計疲れさせるようなマネはすんなよ」
「ばっっ…馬鹿じゃないの!?」
「ははっ、まぁ、お前がその気だとしても、今のあいつじゃ無理だろうけどな」
「とっとと出てけ!!馬鹿千秋!」
「相変わらず口より手が早いな、お前は」
そういうと、千秋は楽しそうに笑いながら部屋を出て行った。
興奮して荒くなった息を整えつつ、もう来るな!という意味も込めて、力いっぱいドアを閉める。
「ほんま…こないに暑いのに、二人とも元気やね」
「あ、ごめん。煩かった?」
「これぐらいいつものことや…慣れとるよ。こっちも…な」
額のタオルが温くなったのを示すよう、弱々しく手がタオルを取ろうとしていたので、慌ててそれを氷水へ入れる。
「寝てていいよ。今日はあたしがタオル変えてあげるし、扇いでてあげる」
「そない夢みたいなこと言わんといて。……悲しうなるわ」
「夢じゃないってば」
冷えたタオルをぎゅっと絞って、蓬生の額に乗せる。
「今日はずっと、そばにいるよ」
「……ほんま?」
「うん。千秋が、星奏の部長さんにお願いしてくれるって」
「なんや…愛されてる気がするわ」
微熱でのぼせているからだろうか。
驚いたような蓬生の表情が、どこかぼんやりしていて、いつも以上に儚げに見える。
「気、じゃなくて、愛されてるんだよ」
「…せやったら、うれしいわ」
「本当だって言ってるのに…」
「なぁ、…」
「ん?」
「少し、手ぇ繋いでて…」
「…うん、いいよ」
普段は少し冷たい彼の手は、発散できない体温が体内に残っているかのように熱い。
「手、熱くない?」
「なら…熱くても、構へんよ……」
「…それじゃ、熱下がらないじゃない」
「も少し元気やったら、汗かいて熱冷ますって方法もあるんやけど…」
「そういうのが言えるんだったら、明日には下がるね」
「…冷たいわぁ」
「本当に冷たかったら、こうして…寝ずに蓬生のそばにいたいなんて言わないよ」
熱くて不快かもしれない。
それでも、どこか寂しげな顔をしているのが気になって、両手でぎゅっと蓬生の手を握る。
「そばにいるから、安心して寝て…そしたら、朝には熱下がってるよ」
「…不思議やね。あんたが言うと…本当に、そう…なる気がするわ」
「蓬生が信じてくれてるからだね。…信じてる相手の言葉なら信じられるんだよ」
「せやね……それに…」
「それに?」
落ち着いて来たのか、徐々に瞼が震え、声が小さくなって来た彼の声を聞き逃さないよう、少し身を乗り出す。
「が……いて、くれれば……」
その続きを聞こうと暫く待っていると、代わりに聞こえてきたのは規則正しい寝息だった。
ここ数日、中々眠れず、眠りも浅かったようなので、こうして眠ってくれると…安心する。
床に置いたあるクッションに膝をつくようにして、祈るような形で蓬生に向かってそっと呟く。
「…普段甘えてくれないんだから、こういう時だけでも甘えてくれるの…嬉しいんだぞ」
もっと甘えて欲しいって気持ちもあるけど、こんな風に甘えてくれる彼を他の人に見せたくないという気持ちの方が大きい。
「あたしには、もっと…甘えてもいいんだからね、蓬生」
その声が聞こえたのかわからないけれど、眠っている蓬生が少微笑んだのを見て、あぁ、そんな彼も好きだなぁ…と、改めて思った。
好きになると、なんでも好きになっちゃうんですけどね…あばたもえくぼ…(笑)
最初は絵に声合わないかなぁ…とか
高校生はきっついやろ!とか
まぁ、色々思ったけども…、今は、全く気になりません。
寧ろ、あの声が大好きだ!!
妖しさ、気だるさ、艶っぽさバンザイ★
生で見たらどうかってのはまだわかりませんが…それでもときめけたら、本物だな(笑)
星奏学院祭3での結果をお楽しみに!?
ちなみに私は普段頼ってる人が、時折甘えてくれると、愛しくて仕方がありません。
普段からずーっと甘えてる人とかが好きなわけじゃありません…多分?(笑)