「…寝た、か」
泣き腫らした目元に、そっと口づけてから、乱れた髪を撫でてやる。
「良くも悪くも…泣けるってのは、いいことだ…」
泣けないってのが、一番辛い。
身体にも、そして…心にも。
「お前さんは、泣くってことに抵抗があるようだが、悪いもんじゃないぞ」
――― どうしてこんなに泣くのかな… ―――
そう、ぼやいたことが何度もあるな。
子供じゃないんだから、すぐに泣きたくないって。
感情を撒き散らしているようで、嫌だ…と。
「…素直でイイじゃないか」
指先で前髪をはらい、そっと…口づける。
「俺は、そんなお前さんが…好きだぞ」
負の感情を抱え込んで
泣くことも出来ず
現実から目をそらすため、酒に逃げて溺れちまうよりよっぽどいい
「カッコ悪いとこ見せたくないとか、そんなとこ見せたら嫌われるんじゃないかとか…考えるな」
そういうのも、全部ひっくるめたお前さんを…
今度こそ、受け止めるって決めたんだ。
「…生半可な覚悟で、お前を受け入れたつもりはないぜ…」
「ん…」
名前に反応したのか、ぴくりと動いた身体。
けれど深い眠りに落ちているからか、目を覚ますことはない。
腕の中の身体を、抱き寄せるように自分の胸元へ引き寄せる。
「疲れたろ…ゆっくり、眠れ。
大丈夫、お前さんが悪い夢で魘されたら、起こしてやる。
俺が…お前を守ってやる」
――― だから、いいんだ… ―――
いくらでも、泣いて喚いて…
もっと心の内を俺に聞かせてくれ
「Buona notte, una persona di caro…」
耳元へそっと囁き、腕の中の愛しい女の呼吸に合わせて、俺も目を閉じる。
目覚めたら、何をしようか…
少しは腹でも減らしてくれれば、飯を作るんだが…
それともハナさんの紹介で、陽だまりでピクニック…てのもいいな
目が覚めたら、また…可愛い笑顔を見せてくれ。
「俺の、最後の…una persona di caro…」
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