「落ち着きました・・・か。」
「あぁ。」
悟浄の膝の上で、まるで猫のように体を丸めているの髪へそっと手を伸ばす。
「随分乱れちゃいましたね。」
「・・・だな。」
柔らかな髪が、まるで突風に煽られてしまったかのように乱れたまま悟浄の膝の上に散らばっている。
「随分・・・辛そうだったからな。」
「えぇ・・・」
突然、彼女が腹痛を訴えて僕らに手を伸ばしてきた。
額に脂汗を滲ませて、唇を噛み締めながら体を小さく丸めて泣きじゃくる姿は、今思い出しても胸が痛む。
「なぁ、医者連れてかなくていいのか?」
「・・・彼女が行くと思いますか?」
「・・・」
「それに行った所で精神的な物ですから、解決策はありませんよ。」
「・・・ケド・・・」
「僕らに出来る事は、これだけです。」
彼女の前に跪き、涙の後をそっと指で拭う。
「愛してますよ。」
「お、おい!?」
「僕も、悟浄も・・・貴女を愛しています。」
――― 僕らに出来るのは、彼女への愛を伝える事だけ ―――
「・・・」
「だから、1人で我慢しないで下さい。」
そう呟きながらそっと手に気を集めて、噛み締めていた時に切れたであろう唇へそっと指を当てる。
「本当に、もっと肩の力抜いてくれればいいんですけどね。」
「本人アレで抜いてるつもりだからな。」
「・・・頑張り屋さんですからね。」
「だな。」
僕が彼女から手を引くと、今度は悟浄が彼女に顔を近づけて、その耳元に甘い声を落とす。
「な、少しはオレら役に立ってるか?チャンの側に・・・いてやれてるか?」
「・・・」
「チャンが許してくれンなら、どんなトコでもついてく覚悟は出来てるんだゼ?」
「・・・そう、ですね。」
「だから、1人で泣くなよ・・・」
そう囁くと悟浄は彼女の耳元から顔をあげ、長い髪をかきあげると辛そうなため息をひとつついた。
「やっぱ、女の泣き顔は苦手だな。」
「おや、女性全般なんですか?」
わざと明るめな口調でそう問えば、返ってくる言葉はきっと僕が考えている物と同じはず。
「いんや、チャンの泣き顔だけだ。」
「・・・良く出来ました。」
明日の朝食は、皆で仲良くおかゆを食べましょう。
そして眉間に皺を寄せちゃうような、マズイ漢方薬を飲んだら・・・僕と悟浄と3人で、庭でお昼寝しましょう。
何があっても、どんな時も・・・繋いだ手を、離したりはしないから。
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