「ばかー!!!」
「「っ!?」」
部屋からの雄叫びに居間でお茶を飲んでいた悟浄はお茶を吹き出し、八戒はポットを手放してしまいそうになった。
「…ちょっと見てくる」
「…気をつけて」
カリカリと頭を掻きながら雄叫びをあげたと思われる人物のいる部屋の戸をノックする。
「チャン、どーしたんだよ」
「・ ・ ・」
ギーっという音を立てて中から出てきたのは…世にも不機嫌そうな顔をした一人の少女。
「…チャン?」
見ると頬を引きつらせながら目には涙を浮かべている。
(…ま〜たなんかあったな、こりゃ…)
長い付き合い…ではないがこのパラレルワールドからやってくる少女は中々情緒不安定である。
八戒ほど深く落ちこまないが、たいした事のない事で精神の安定を崩す。
唇を噛み締めてじっと1点を見つめている視線が痛ましい。
「どーしたよ」
壊れ物を扱う様にそっとの背に手を回し、そのまま自分の方へと引き寄せた。
「・ ・ ・」
「悟浄サンに言ってみ…楽になるゼ?」
それでも口を開こうとせず、ただ悟浄の背に回された手がギュッと服を掴んでいるだけだった。
「手の掛かる子だよナぁ。チャンは…」
そんな事を言いながらも頭を撫でる手は優しい。
「取り敢えず部屋から出てこいよ…八戒も心配してる」
こくりと頷いたのを見て背中に回していた手を肩へと回す。
俯いたまま片手は悟浄のシャツを離さない。
「悟浄!…、どうしました?」
八戒が慌てて側にやってきて悟浄へ理由を目で尋ねたが、悟浄はただ首を振るだけ。
悟浄がゆっくりとシャツを握り締めている手をはずし、目の前に居る八戒へとの手を差し出した。
八戒はさして慌てるでもなくその手を受け取り、両手で優しく包みこんだ。
「…お茶に…しませんか?」
が頷く前に悟浄はわざと元気よく声を張り上げドアの方へと向かって行った。
「そうすっか!よし、オレが何か買って来よう!」
「美味しいものお願いしますね」
「任せろって!」
悟浄を見送った後、八戒はお茶をカップに注ぎの目の前に置いた。
「…どうぞ」
「・ ・ ・」
暫らくお互い何も声を発しないまま時だけが過ぎて行った。
やがて眉間の皺もほぐれてきたがゆっくりと紅茶の入ったカップへ手を伸ばした。
「…おいしい」
「おかわりはいかがですか?」
「…お願いします」
少女はよく色々な事を考えて考えすぎて壊れてしまいそうになる事がある。
それでも時間をかければ徐々に落ちついてくる。
落ちつく前にこちらから問いただすと、考えがまとまらない内に話し始めてしまい本人もわからなくなり混乱してしまう。
その混乱した自分に嫌気が差し、さらに落ちこんでしまう。
それが分かってから…悟浄と八戒は何も言わず、ただ側に居るだけに徹していた。
そして少女が自ら上ってくるのをじっと側で待って居て、上がってきた時には両手で迎える。
そんな安心感があるからか、少女は以前よりも精神が安定してきている様だ。
「…悟浄遅いですね」
「そうだね…」
そういうの目は考えすぎて疲れた頭と同様、瞼が重そうに目の上を覆っていた。
「悟浄が戻ってくるまで、少し休みますか?」
「…いい?ごめんね…」
そういうとはゆっくり瞳を伏せソファーへと体を埋めていった。
「折角だから膝枕とか使いませんか?ちょっと痛いかも知れないですけど」
「嬉しい…借ります」
今日は遠慮せずに素直に八戒の膝に頭を乗せる。
やがて規則的な呼吸が八戒の耳に届いた。
暫らくして悟浄が戻ってきた時、の眠気に誘われたのか2人がソファーでうたた寝している姿を思わず笑顔で見つめてしまったそうだ。
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