「…っ、すいませ…ん」

「んー…別に僕は構わないよ」

「でも…で、も…」

突然泣き出して、すがり付いて…京楽隊長が困らないわけはない。

「構わないって言ってるじゃない」

頭上から微かな笑い声と共に、大きな手が頭に乗せられた。

「構わないから…」

…ぅ…



いつもと変わらない声が…
いつもと、変わることのない態度が…

必死に繋ぎ止めていた何かを解いていく。



「ふ…っ…」

堪えきれない嗚咽を唇を噛み締めて堪える。
けれど、震える肩までは堪え切れなかった。



ばさり…



わざとらしいとも思えるほど、大げさな音を立てて身体ごと何かに包まれた。

「今日は少し冷えるね。そのままじゃ、風邪ひいちゃうよ」

…ぃ…

包んでくれたのは…京楽隊長の、羽織。
温かな温もりが、まるで抱き締めてくれているかのように身体を包み込む。

でも、実際に触れているのは…頭に乗せられている手だけ。

「…僕でよければ、こうしていてあげるよ」

「たい
…ちょ…

「大丈夫…誰が来ても、僕が隠してあげるから…」



変わらない声…
でも、いつも以上に…優しい態度

それが、せき止めていた心の栓を、外してしまった。



すがりついていた手で、しっかり隊長の衣を握る。
唇を噛み締め、俯いたまま零れ落ちる涙は…重力に任せて、ただ落ちていくだけ。

っ…ぁっ…

ただ、苦しくて…でも、言えなくて。
どうしていいか、わからない…そんな時、隊長の顔を見たら…急に、胸が痛んだ。

後先も考えず、こうして…手を伸ばしてしまった。



「大丈夫だよ、ちゃん」

ただ、そのひと言が…私の戒めを解いてくれた。





ありがとうございます…
そして、すいません…隊長





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