「あたしも飲みたーい!!」

金蝉の部屋で天蓬と捲廉と一緒に部屋の主を待っていた時、捲廉の持ってきたお酒を見てのの台詞だった。
金蝉に…と持ってきたお酒だったが帰りが遅いため先に封を切って二人は飲み始めたのだった。
天蓬も捲廉もとてもおいしそうにそのお酒を飲んでいたので、も飲んでみたくなったのだった。

「ずるいよ二人だけで飲むなんて!」

「でも、貴女にはまだ早いんじゃないですか?」

「そうそう、小胸なおじょーちゃんにはまだまだ…」

一番気にしている事を口に出され、は手近にある物を掴んでは捲廉に向かって投げ始めた。

「そんな事ないもん!こ、この胸だってすぐに大きくなるもん!!」

ムキになって突っかかるのが面白いのか、捲廉が顔に当たったクッションを手にに近寄った。

「へぇ〜?いつ?どんくらい?」

「もうすぐしたら牛さんみたいに大きくなるもん!!」

天蓬と捲廉の二人の脳裏にはモーモーパジャマを着たの姿が映し出されていた。

「それはそれは…」

天蓬の笑みは変わらない。

「そりゃ無理だろう。」

捲廉は呆れ顔で手を横に振り、絶対にそれは無いと言い続けた。
二人の様子に完全に機嫌を損ねたは顔を真っ赤にし、フグの様に頬を膨らませた。

「無理じゃないもん!捲兄のバカァー!」

机の上にあった本(おそらく辞書か何かであろう)を掴み捲廉の頭に振り落とした。

「どわっっ!」

見事直撃をくらった捲廉はそのまま床に倒れた。倒れた捲廉を冷たい眼差しで天蓬が見つめている間には自己の逃げ道を確保した。
そしてもう片方の手に持っていた花瓶を天蓬に向かって投げつけた。勿論天蓬は僅かな動きでそれをかわし、花瓶の割れた音の後には…

「て…天ちゃんの…馬鹿ぁー!!」

の絶叫が金蝉の部屋に響き、バタンという凄まじい音を立てて扉が閉められた。
その反動で壁にかかっていた掛け軸が床に転がり落ちた。
足音が遠ざかり聞こえなくなったのを確認してから捲廉が顔を上げた。

「いっつー。アイツ本気で振り下ろしやがった。」

「当たり前ですよ。思春期の女性の体について言うなんて無粋な人ですねぇ」

捲廉はが投げたクッションを床に置きその上にどっかりと座った。

「…でもよぉ、アイツあと数年もすりゃぁ…天界一の美女に育つぜ。」

「天界一…ですか?」

天蓬も床に落ちた本を端に寄せ、自らの居場所を確保した。

「あぁ。あの気風の良さ、何者にも屈しない瞳、そして…。まぁ〜胸なんて肉があるかないかの違いなんだから気にしなくてもいいのによぉ。」

先程自分が持ってきた酒を手酌で飲み始めた。

「そうも言えないんですよ。あの娘にも色々あるんです。」

天蓬が捲廉に空のグラスを差し出すと捲廉は酒を注ぎ始めた。

「…なーんか知ってるだろ?」

「さぁ…でも、お会いしたいですね。天界一の美女に…」

「そうだな…。」

それから数年後。

天界の歌姫である光明歌姫が捲廉の予想通りの美女になるかどうかはまだ誰も知らない。





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この話の中でヒロイン、捲兄を辞書で叩いていますが…
私はコレを実際に人にやった事があります(汗)
怒りのあまり自分の中で何かが切れたんですよ、ぷっちんと・・・。
気付くと側にあった広○苑を…その節は本当に申し訳ない(TT)

お酒に限らずですが、人が食べている物ってやたらおいしそうに見えませんか?
私はよく人の物を奪います(笑)だっておいしそうなんだもの(爆)
それが元でできた話です。