「ん〜・・・」
「どした、チャン?」
「ねぇ悟浄、あっちの方少し晴れてない?」
「あー・・・どーかな。」
「今日一日、天気このままかなぁ?」
どっかの生臭坊主よりも数百倍可愛い眉間の皺を寄せながら、チャンは空を指差した。
7/7 今日の天気は ――― 曇り
彼女が一生懸命作った笹の葉の飾りは、今も庭で風に揺れている。
家族的行事に縁のなかったオレも目を丸くするほど、すんなりその輪に入れてくれた彼女。
一人一枚細長い紙切れに糸のついたの渡されて、何するつもりかと思えば・・・願い事をひとつ書けってな。
たかが紙切れに願いを書いてどーすんだよ、って頬が引きつった。
けど・・・目の前で一生懸命願い事を考えてるチャンを見て、たまにはこう言うのもいいかって思えた。
「皆のお願い事、見て貰えないじゃん。」
ポソリと呟いた彼女の言葉は、自分の為じゃなく人の為の言葉で・・・それが聞けただけでも七夕に感謝したい気持ちになった。
「・・・な、チャン。七夕が曇りの時ってどういう意味か知ってっか?」
「曇りの意味?」
「そ。」
「・・・知らない。」
「織姫と彦星がデートしてるトコ、見られないように隠してるんだってよ。」
「ほぇ?」
「アイツラって確か一年に一度会えるんだろ?んで、久々のデートをオレ達に見せないよう雲のカーテン張ってんだってさ。」
いつだったか賭場で知り合った女がまるで寝物語を聞かせるようにベッドで言ってたのを思い出した。
その時はガキの話だろって聞き流したけど・・・
「そっか・・・そうなんだ!じゃぁ空が曇ってる間は二人がデートしてるって事なんだね!」
・・・彼女がこんな風に笑顔を見せてくれるためにある話なら、それも悪くねェって思えるのはどーしてだろうな。
「そー言うコト・・・ってコトで、オレらもアイツラ見習って茶でも飲むか。」
「うん!」
笑顔で頷いたチャンの額には、眉間の皺なんてひとつも無くなってた。
おい、一年ぶりのデートで浮かれてる彦星サン。
お前の彼女の織姫ってネェちゃんがどんだけイイオンナかしンねェケドさ・・・これ以上眩しい笑顔持ったイイオンナじゃねェだろ?
「悟浄はコーヒーでいいの?」
「あー今日は・・・チャンと一緒のにするわ。」
「紅茶?」
「あぁ。」
「じゃぁ美味しくて綺麗なアイスティいれたげる!」
空の上に隠れてる太陽よりも眩しい笑顔をオレに見せて、チャンは台所へ姿を消した。
「・・・悟浄、ラッキー。」
ニヤリと口元を緩めて、火もつけずにくわえていた煙草を灰皿へ置く。
曇りだけど、オレの願いは届いちまったみたいだな。
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――― 彼女と一緒に過ごしたい 沙悟浄 ―――
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七夕曇りバージョンです。
相変わらず風見の中の悟浄は絶好調(笑)
最近一番すんなり動いてくれるのは・・・彼です。
話の中で曇りの日、織姫と彦星がデート現場を隠してるって言う話をしてますが・・・考えたのは私です(笑)
実話ではありませんので、容易く信じないように★いつもの捏造です(おいっ)
眠れなくてゴロゴロしてた時に思いついた割には、面白い事になったなぁと思ってます。
さて、皆様の地域の七夕の天気は・・・如何でしたか?