暫くはキャンドルの小さな明りの中で食事してたんだけど、そんな和やかな雰囲気は長く続かなかった。
不意にジープの鳴き声が聞こえて皆でそっちを見たら・・・羽が僅かに焦げているのに気付いた。
すぐに八戒が治療をしたから大事には至らなかったけど、原因はキャンドルにあった。
その後、部屋の電気をつけて机の上のキャンドルを片付けたのは言うまでもない。

今日は悟空がいないから量的にはそんなに無いけど、それでも三人で食べるには多すぎるくらいの料理がテーブルに並んでいる。
しかも種類だけなら前回よりも・・・絶対多いよ、これ。
一体八戒は何時から作ってたんだろうなぁって思いながらもしっかり全種類食べさせてもらった。
前食べた時も思ったけど八戒のローストビーフって本当に美味しいよね。
だから最後の一枚も遠慮せずに手を出したら・・・悟浄と取り合いになった。
あたしも悟浄も一歩も譲らなくって、結局笑顔の八戒に諭されてジャンケンでどっちが最後の一枚を食べるかって事になったんだけど・・・ジャンケンをしている間にジープに食べられてしまって思わず皆で笑った。

当の本人であるジープはさっき火傷してしまった羽の痛みも忘れているのか、首を傾げながらローストビーフを口にくわえて真っ赤な目でじっとあたしを見ている。
そうだよね、ジープだってお肉大好きだもんね。
そんなちょっとした事でも笑えてしまうほど、楽しい食事だった。





食事を終えて一旦テーブルの上のお皿を台所へ下げてから、あたしは椅子に崩れるように座り机にだらりと手を伸ばして倒れこんだ。

「はぁ〜・・・お腹いっぱい。」

「まだケーキあんだろ?入ンのか?」

目の前に座っていた悟浄が煙草を吸いながら楽しそうに笑っていたので、体を起こして胸を叩くとニッコリ笑った。

「ケーキは別腹だもん♪」

「あ、そ。」

キッパリ言い切ったと同時に八戒がケーキとコーヒーを持って戻ってきた。

「食後と言う事で少し濃い目に入れましたけど・・・」

「ありがとう八戒。」

八戒の手からコーヒーを受け取って先にミルクを入れさせて貰っていると、目の前から歓声が上がった。



悟空がいないからこんな声聞かないと思ったけど・・・。



「おーっ!美味そう!!」

「切るのが勿体無いくらいですね。」

テーブルの真ん中に置かれたのは、八戒に教えられて初めて作ったロールケーキ。
そしてあたしが顔にクリームをつけながらも一人でデコレーションして作ったケーキでもある。

「ちょっとこの辺失敗したけど・・・」

照れ隠しにちょっと歪んでしまった部分を指差すけど、二人は笑顔でそれを否定する。

「全然分かんねェよ♪」
「えぇ、上手に出来ていますよ。」

・・・あー二人には敵わないや、物凄い褒め上手だよ。

膝に乗せていたジープの背中を撫でながら恥ずかしくてちょっと視線を反らしたあたしの目の前にコトンと言う音と同時に小さな白い箱が置かれた。
「?」

チャンにプレゼント。」

「ほぇ?」

ニッと笑いながら箱から手を離していく悟浄と、隣でそれを見ている八戒。
え?ナニナニ!?今なんて言った?

「僕と悟浄からのプレゼントです。」



プレゼント・・・二人からの?



「えーーーっ!」

慌てて目の前に置かれた白い箱を悟浄の方へ押し返す。

「ダメだよっ!いっつも悟浄達に貰ってばかりだし、あたし何もプレゼント用意してないしっ!」

二人には本来なら使わなくてもいいお金を無駄に使わせていると言っても過言ではない。
こっちに来てから洋服だけでなく日常使う食器や、女として必要な生活用品・・・その他数え上げればきりが無いくらい。
両手を振ってそれを受け取るのを拒否していると隣から、八戒の白い手が伸びてきてその箱を取るともう一度あたしの前に差し出した。

の為に用意したんです。」

「でっでも・・・」

八戒が柔らかく微笑んで箱を差し出すけど、いくら八戒の笑顔の頼みでも・・・手が出せない。
暫く八戒との間で攻防が続いたけど、それを見ていた悟浄が手に持っていた煙草を灰皿に戻して小さくため息をついた後、驚くべき事を言い始めた。

「ま、チャンがどーしても受け取れないって言うんならそれはゴミ箱行きだな。」

「え゛」



ごみ箱ぉぉ!?



「そうですね。以外の人にあげるつもりはありませんからね。」

「貸せよ八戒、オレの方がゴミ箱に近い。」

え?!え?まさか捨てちゃうつもり!?

「それじゃぁ・・・」

苦笑した八戒が手に持っていた箱を悟浄の方へ差し出そうとした腕を慌てて止める。
八戒の手に触っちゃった・・・って思うよりも先に、二人が選んでくれたものを二人の手で捨てさせるなんて事したくない!

「もっ貰う!貰うから捨てないで!!」

動きを止めた八戒の手から箱を奪うと、捨てられないようしっかり胸に抱え込む。
さっきまでいらないいらない言ってたのに、なんて都合がいい女だって思われても構わない。
捨てるなんて絶対にさせちゃダメ!!
そう思いながら二人の顔を交互に見たら・・・何て言えばいいんだ?
落とし穴を作ってそこに綺麗にはまった人を見ているかのような満足そうな笑みを浮かべてこっちを見てる。



・・・もしかして、またあたし騙された!?



「ホンッとチャンは単純で可愛いよなぁ〜♪」

「えぇ・・・本当に。」

・・・やられた。

この二人を相手に遠慮しちゃいけないって分かってるのに、どうしても遠慮してしまう。
二人はあたしがそう言う風に遠慮するのが分かっているから更にその裏を読んで・・・こうしてプレゼントを受け取るように仕組んだんだ。
その想いが嬉しいやら自分の単純さが情けないやら複雑だったけど、今はやっぱりこの言葉を言わなきゃね。

「・・・どうもありがとう、開けてもいい?」

二人が無言で頷いたのを確認してから青いリボンを解いてふたを開ける。
するとその中に入っていたのは・・・クリスマスプレゼントとしては意外なものだった。
「これ・・・」

柔らかな白い布の上に置かれていたのは一本の鍵。
頭の中で何処の鍵だろうなぁって考えていると、悟浄と八戒がお互いポケットの中から何かを取り出してあたしの目の前にそれを差し出した。不思議に思ってそれを見る。





・・・あれ?




たった今貰ったばかりの鍵を取り出して隣の八戒の鍵と見比べる。
ついているキーホルダーは違うけど、形は全く同じ。
悟浄の鍵を見ても、やっぱりキーホルダーが違うだけで鍵の形は同じだった。
もしかして・・・この鍵って・・・。

「女へのプレゼントに家の鍵もどうかと思ったんだけどさ。」

「まだにあげていない物で喜びそうな物ってこれしか思いつかなかったんです。」

どうしよう・・・嬉しくて手が震える。

「やっぱさ、一緒に住むなら鍵は必要だろ?」

ポンって頭に手を置いた悟浄の優しさが胸に伝わる。

にも戸締り注意を教えなきゃいけませんね。」

隣に座っている八戒もクスクス笑いながら背中をポンッと叩いてくれた。





三人で過ごした初めてのクリスマス
思いがけないパーティーと二人の気遣いだけで十分だったのに
それ以上に嬉しいプレゼントが貰えるなんて・・・思わなかった。
言いたい言葉、言わなきゃいけない言葉があるのに
想いが溢れて、胸が詰まって・・・声が出ない。






「・・・りが・・と

それでも精一杯の想いを込めて口を開くと同時に一粒の涙が膝に落ちた。
貰った鍵をギュッと胸に抱きしめる。
声にならない声で告げた言葉が二人に聞こえるはずもないのに
返ってきたのは二人からの温かいメッセージ。



「「メリークリスマス」」











大好きで大切な人達から貰った大切なプレゼント。
箱に入っていたのは・・・一本の鍵。
他人から見ればただの家の鍵だけど、

あたしから見ればそれは何よりも大切な・・・





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今年は二人とクリスマスを過ごしてみました!
・・・無駄に長くてごめんなさい(TT)おかげでまた悪い癖が出て途中で飽きました(笑)
どの辺かって言うと・・・3話目です(笑)
ぜーんぜん進まなくなって「今年のクリスマス話は無し!」になりそうな所まで行きました(笑)
それより何より先に謝っておかねばいけない事が!!
・・・三蔵様、悟空ファンの皆さんごめんなさいm(_ _)m
本当だったら翌日この二人とのプチクリスマスも考えたんですが・・・書けませんでした(TT)
時間的余裕が無く、こっちを書き上げるので手一杯になっちゃいました。
三蔵達とのクリスマスは来年かなぁ〜(遠い目)←書けるかどうか無茶苦茶疑問(苦笑)

って所で気を取り直して、今年のうたた寝クリスマスは二人と一緒ですv
ちょうど期間限定作品復活の中に去年のクリスマス話がありますが・・・いやぁ〜随分と進展してますね(笑)
アットホームな物って言うか大騒ぎするクリスマスから、一転してしっとりしたクリスマスへv
それにしては描写とか限りなく下手で泣きたくなりますが(TT)
個人的にヒロインが鍵を受け取って、八戒達がさり気なく鍵を取り出してヒロインに見せるシーンが好きですv
でも何気に八戒とかは鍵に家内安全とか言うキーホルダーつけてそうだし、悟浄は鍵よりもキーホルダーの方が多そうだなぁとか思いました。
ほら、悟浄って賭場での知り合いとか多そうだからワケ分かんないキーホルダーいっぱい貰ってそうだから(笑)