「ふあぁっ〜〜」

大きな欠伸を手で隠しながらのろのろ廊下を歩く。
んー・・・何だか暑くて寝苦しいなぁ。
取り敢えず顔でも洗ってスッキリさせよう。
洗面所の冷たい水で顔を洗って、ほんのちょっと気分が上昇した所で居間へ行くと・・・新聞を読んでいる赤い、長い髪の人間がいた。
普段なら全然気にならない髪だけど、今日は・・・何だか凄く気になる。

「・・・ただでさえ暑いのに・・・」



無造作に肩にかかっている長い髪。
煙草から立ち昇る細長い煙。




この時のあたしはかなり暑さで脳みそが沸騰していたに違いない。
腕に巻いていたゴムを右手に持ち替えて、ゆっくり・・・ゆっくり椅子に座っている人物に近づく。
そして相手があたしの気配に気付いて振り返るよりも早く、その長い髪をぎゅっと掴んだ。

チャン!?」

「暑い!!」

「はぁ!?」

大きな疑問の声を上げながら髪を掴んでいるあたしの手を解こうと悟浄が長い手を伸ばしてきた。
しかし今のあたしに怖いものは何もない。

「ちょっ、チャン?」

「だって暑いんだもん!!」

「オレは暑くねェって!」

「あたしは暑いのー!!」

部屋の温度計は28度だけど、湿度計は90%を越えているみたい。
カラッとした暑さなら大丈夫だけど、こんな風にじめじめした暑さには弱い。

「この髪切ってー!」

「んな無茶苦茶なっ!」

あたしの手を振り切って椅子から立ち上がった悟浄は、髪の毛を守るかのように手で束ねてじりじり後ろへ後ずさって行った。

「ねぇ悟浄ぉ〜」

チャンのお願いでもダメだって!!」

「ちょっとでいいから!」

「ダメなモンは駄目!」

ぶーっと頬っぺたを膨らませている所へ、外で洗濯物を干していた八戒が戻ってきた。

「一体何事ですか?」

「八戒!」

すぐさま八戒の元へ言って、おもむろに悟浄を指差してさっき迄狙っていた物を八戒に訴えた。

「八戒も悟浄の髪暑いと思うよね?」

チャ〜ン」

「ね!」

じっと八戒の目を見つめれば、いつもの笑顔で頷いてくれた。

「そうですね、今日みたいな天気の日はちょっと暑苦しいかもしれませんね。」

「八戒!てめぇ!!」
「だよねv」

喜ぶあたしと憤慨している悟浄。

「でも悟浄は髪切りたくないんですよね?」

「当たり前・・・」

「それじゃぁ残された手段はただ一つです。」

「「え?」」




















「あははははっっ!」
「似合いますよ、悟浄。」

笑い転げるあたしの前には、笑いを堪えながら手にした櫛をテーブルに置いた八戒と、白いリボンで頭の上に可愛らしいポニーテールを作られた悟浄がいた。

「・・・マジかよ。」

「似合うよ悟浄vカワイイー!!」

「これで少しは暑さもしのげますね。」

「あのなーせめてこのリボンだけでもどうにか何ねェ!?これじゃぁ外にも出れないじゃねェかよ!!」

「えーあたしのお気に入りのリボンだよ?」

「折角が貸してくれたのに、取っちゃうんですか?」

あたしと八戒に言われそれを無視する事なんて出来ないって分かっててやってる。
案の定悟浄は顔をしかめながら大きなため息をつくと、空のコップを八戒に差し出した。

「・・・アイスコーヒー。」

「はいはい。も飲みますか?」

「うんv」

悟浄の長い髪は可愛いポニーテールにまとめられ、後ろを向くと馬の尻尾のようにゆらゆら揺れていた。
それから皆でお茶を飲んで、気分が爽やかになった所で悟浄のリボンは普通のゴムへと替えられた。





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あはははは・・・これ書いた日、暑かったんですよ。
湿度が高くて「じとぉ〜っ」とした空気だったんです。
部屋の中で蕩けながら書いたんでしょうね、これ。
発見した時には大笑いしちゃいました(笑)馬鹿話な上短い話で申し訳ない(苦笑)
でも今を逃すと来年までこの話しUP出来そうに無かったので…。
残暑はまだ続くんですかねぇ、今年。