「っちゃ〜降り出したか・・・」

「え?」

買い物を終えて店を出ようとしたら、どんより雲だったはずの空は何時の間にか黒い雲に覆われていて、ポツリポツリと雨粒を落とし始めていた。
あたしはたった今買ったばかりのホカホカの豚饅頭を脇に抱えてそっと屋根の外へ手を差し出すと、霧雨のような雨が手に当たる。
うぅ・・・やっぱり傘持って来るべきだったか。
八戒が出掛けに言ってたけどその時はまだ曇りだったし、すぐに帰る予定だったから断っちゃったんだよね。
悟浄も同じ事を考えてるみたいで、小さなため息をついたと同時にこっちを見た。

「・・・どうする?少しその辺の店で休んでくか?」

傘が無い以上雨を防ぐのはそれくらいしかない。でも・・・

「・・・そうすると豚饅冷めちゃうよ?」

あたしは抱えていた豚饅の袋を手に持ち替えてそっと中を覗く。
買ったばかりのそれはまだ熱い湯気を上げていて、走って家まで帰ればその温かさは維持出来る感じ。

「悟空、お腹空かしてるよね。」

「サルはほっといてイイって。チャンが風邪引いたらどーしょうもねェだろ?」

「んー・・・」

でもさ、折角買い物に出てこんな美味しそうな物買ったんだもん。
どうせなら温かいうちに家に帰って皆で食べたいって思うのは・・・バカな事なのかな。

「おっ、結構降り始めた。」

悟浄に言われて顔を上げると、さっき迄霧雨のようだった雨は何時の間にか少し強めに降り始めた。
それでもまだ走って帰る事が出来そうな雨量だ。

「ねぇ悟浄、やっぱりあたし・・・」

「早く帰りたい・・・か?」

「うん、だって折角出来たてを買ったんだもん。温かいの皆で食べたいよ!!」

「・・・チャン濡れちゃうゼ?」

「帰ったらすぐに着替えるから大丈夫!」

買い物袋を提げた腕でピースをすると、悟浄が苦笑しながら何故か両手に持っていた荷物を一旦床に置いた。

「わーった。チャンのその荷物、貸しな。」

「これ?」

「そ、オレの荷物と一緒にしてオレが持つから、チャンはさっき買った豚マンをしぃっ〜かり抱えて走るのに集中する事!」

「了解!」

あたしは洋服でガードするように上着のお腹の部分に豚饅を抱えて、いつでも走れる体勢を作った。

「そんで、コレ。」

「?」

両手でお腹のお饅頭を抱えていたから咄嗟に反応できなかったあたしの頭の上に、さっき迄悟浄が着ていた筈のシャツがフワリとのせられた。

「悟浄!?」

「雨避け代わりにドーゾ♪ま、無いよりはマシっしょ。」

そう言ってタンクトップ姿でニッと笑った悟浄は、長袖の部分をあたしの顎に持ってきてキュッと結んでくれた。
端から見ると・・・凄く変な格好なんだろうけど、それでも悟浄の優しさが凄く嬉しい。

「悟浄、どうもありがとう。」

「ドー致しましてvホンじゃ行くか。」

いよっと掛け声を掛けて悟浄が大量の荷物を抱えて一歩店を出た瞬間、あたしもその後を追うように雨の降る外へと駆け出した。





しかし日頃の行いの悪さか、それとも気候の所為か。
あたしと悟浄が店を飛び出して1分後、今までとはうって変わって激しい雨が降り始めた。
地面にはまるで幾何学模様のように波紋が広がり続け、体に降りつける雨は痛いほどだ。

チャン!平気かぁー?」

すぐ隣を走っているはずの悟浄の声も、激しい雨音であまり良く聞き取れない。

「へーきー!!」

「もう少しだ!頑張れ!!」

激しい雨の所為か周囲に靄が掛かってしまって、すぐ側にいるはずの悟浄の姿も霞んできた。

こんなに側にいるのに・・・見えなくなる。

そう思った瞬間、あたしは右手を伸ばして少し前にいるはずの悟浄の服を掴もうとした。

「・・・チャン!」

服を掴むよりも早く伸ばされた手。
それは・・・ずっと側にいた悟浄の手。

「悟浄!」

躊躇わず掴んだその手は雨に濡れて少し冷たくなっていたけど、大きな手はあたしを安心させるようにギュッと力強く握ってくれた。

「・・・離すなよ。」

「うん!」

お互い表情は良く見えないけど、きっと二人とも笑顔だったと思う。
だって・・・こんな雨でびしょ濡れになって、痛いほどの雨に打たれながら走っているのに、あたし・・・楽しいもん。










ようやく家が見えて、あたしと悟浄は最後の力を振り絞って軒下に駆け込んだ。

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

「つ・・・疲れたぁ・・・」

取り敢えず全力疾走して疲れたあたしと悟浄は扉を開ける前に玄関先に座り込んでしまった。
元々あたし体力ないし、持久力もあんまないから走るの・・・遅いんだよね。

「や〜っぱちょっち厳しかったか。」

「で、でもね。豚饅まだ温かいよ!!」

あたしはお腹に抱えていたお饅頭の袋を片手で取り出して、悟浄の目の前に差し出した。

「ほらっ!ね?」

「・・・温かいな。」

「へへぇ〜悟浄が上着貸してくれたおかげだね。・・・あっ悟浄体冷えてない?」

「あ?オレは別に・・・」

「お二人とも、何時までもそんな所にいたら風邪引きますよ?」

「「八戒!!」」

突然側の窓から声が聞こえて二人揃ってそっちを見れば、八戒が苦笑しながらこっちを見ていた。

「そこに座られると扉開けられませんから少し避けてください。」

「はーい。」

立ち上がろうとした時、あたしの右手が何か重い物に引っかかったような感覚がした。

「?」

右腕から視線を辿っていくと・・・その先にあったのは、指を絡めてしっかりと手を繋いでいる悟浄の左手。

「っっ!!」

チャンがしぃ〜っかり握ってくれっから・・・離したくなくてナ。」

「悟浄っ!!」

顔を真っ赤にして右手を上下にブンブン振り回すけど、中々悟浄が離してくれない。

「ごっ悟浄ってば!!」

「イイじゃんvたまにはこーゆーのも♪」

あぁぁっ、何か雨で手が冷たいはずなのに、繋いでる手の平は何だか熱い・・・様な気がする。



それから暫く悟浄は八戒に言われるまで手を離してくれなくて、ようやく手を離した時には、悟浄の指の後がうっすらあたしの手についていた。
ちなみにびしょ濡れになって運んだ豚饅は、湯気は出ていなかったけどほんのり温かい状態でサッとシャワーを浴びたあたしを待って皆で熱いお茶を飲みながら食べた。





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平田さんと握手したぞ記念話(笑)
実際に平田さんと握手した時は、そっと手を添えてもらうような感じだったので悟浄のように手の痕が残るほどキツク握って貰ってはいません♪
それでも幸せでした〜♪(ウットリ)
と言う訳で、まさに自己満足の世界です。この話は(笑)

良く考えたら、意図して悟浄と手を繋ぐって事やってないんじゃないかと思って・・・今回手を繋いでみました。
でも悟浄の家のドアって・・・家の中から引けばよかった気がするんですけど、まぁその辺は目を瞑って・・・くれませんか!?(平謝り)