「嘘ですよ。」

「え゛・・・」

八戒の言葉に思わず持っていた本を落とす。

「・・・ホント?」

「はい。」

じぃ〜っと八戒の目を見つめる。
あたしなんかが八戒の嘘を見抜けるなんて思っちゃいないけど、それでも表情の変化を見つけようとじっと見つめる。
・・・が、八戒の表情はいつもと全く同じ。
穏やかな笑みを浮かべ、あたしの視線を受けている。
逆にこっちが恥ずかしくなって先に視線をそらして、コホンと咳払いをする。

「えっと・・・もう一回、聞いてもいい?」

「えぇ、どうぞ。」

真面目な顔をして尋ねるあたしの様子がおかしいのか、八戒が苦笑しながら頷いた。

「ウサギって寂しいと死んじゃうんだよね?」

「違いますよ。」

「嘘ぉ〜〜〜〜〜っっ!!!」



――― あたしが信じてた数十年間は一体何だったの!?



「僕もこの間テレビを見て知ったんですけど、ウサギは元々縄張り意識が強い生き物らしいんです。」

「・・・」

「だから自分のテリトリーに他のウサギがいると、喧嘩しちゃうらしいですよ。」

「喧嘩?」

「えぇ、お互い縄張りを主張しますからね。下手をするとどちらかが死ぬまで喧嘩するそうです。」



・・・あんな可愛い顔して、あんなモコモコしててそんな喧嘩っ早かったのか!!



「あれ?でも学校とかだといっぱいウサギっているよね?」

「余程相性がいいんでしょうね。」

あっさり言われて疑問が微かに残るけど、八戒に笑顔でそう言われると・・・そっか、と妙に納得してしまう。

「まぁ中には相性が合わないウサギもいるかもしれませんが、きっと上手く共存しているんですよ。」

「そういうものかなぁ・・・」

「えぇ。」

八戒の膝の上に乗っているジープを撫でようと手を伸ばした瞬間、勢い良く玄関の扉が開いた。

「悟浄!それ俺がに渡すんだってば!」
「うっせぇ!ガキがオンナにプレゼントなんざ数十年早ェんだよ!」
「煩ぇ!!死にたいか貴様らっ!!」

「「その距離は当たるーっっ!!」」

「・・・一気に賑やかになりましたね。」

「そ、そうだね。」

気持ちよさそうに眠っていた所を起こされたジープは酷く不機嫌で、ちょっと顔をしかめながら八戒の膝から飛び立った。
よたよたと何処に向かってるんだろうってジープの様子を伺っていたら、いつもと違う八戒の声が背後から聞こえて自然と顔がそっちに向く。

「きっと僕らもウサギと同じように1人でいる方が平和な日常が過ごせるのかもしれません。」

「え?」

「それでもこんな風に側にいてくれる人がいて、多少賑やかな方がいい・・・と思えるのはどうしてでしょうね。」

「・・・八戒?」

妙に寂しげな八戒の表情が気になって、自然と八戒の方に手を伸ばした。
その手が頬に触れるか触れないか・・・という時、背後から大きな声が聞こえ振り向くと・・・

「うわぁ・・・」



――― 振り向いたあたしの目に映ったのは、悟浄と悟空に向かって火を吐くジープの姿



一応三蔵はこちら側に移動してきていたので巻き込まれなかったみたいだけど、一歩遅れたら・・・法衣の端っこくらい焦げてたかもしれない。

「ここ最近熱帯夜でジープの眠りが浅かったですからね。」

「・・・と、止めなくていいの!?」

「あれはジープのテリトリー内の出来事ですから。」



それはつまり・・・自ら火の粉を浴びに行くのは嫌、という事だろうか。



「あぁ、でもがあの場にいたらすぐに助けてあげますよ。」

そう言ってにっこり微笑んだ八戒の笑顔からは、さっきまでの寂しげな表情など全然垣間見えなくて・・・気のせいだったのかなって思ってしまいそうになった。

「おい、コーヒー。」

「はいはい、それじゃぁ。ウサギさんのお話の続きはまた今度、ゆっくりしましょうか。」

「あ、うん。」

八戒と入れ替わりに三蔵が目の前に座って、いつものように新聞を広げた。
そしてあたしの方へ被害が拡大しないよう注意しながら、悟浄と悟空はジープの攻撃から必死で逃げている。



いつものあたしなら、目の前の三蔵をこっそり覗き見たり、2人の応援を笑いながらする所なんだけど・・・今日は一瞬見せた八戒のあの表情かおが気になって、暫くの間八戒が向かった台所を見つめる事しか出来なかった。





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確かトリ○アの泉で見て、ショックを受けたんですよ。
良く言うじゃないですか、ウサギは寂しいと死んじゃうんだよって。
でも実際は八戒が言っているとおり、縄張り意識が強い生き物なので一匹でも無問題だそうです。
・・・あたしの数十年の刷り込みは一体何だったんだ?とか思いましたね。
という訳で、物凄い久し振りのうたた寝ですが・・・書いたのは去年いや、もう一昨年か(苦笑)
ま、とにかくそんぐらい前の・・・夏、だったと思います。
ホント、スランプというかヘイゼル編が始まってから、手が動かないのです。
CDとか聞いてる時は書けそうなんですけどねぇ(苦笑)
なので、最近書ける最遊記は微妙なシリアスとか空気が好きって感じの話になってます。
ん〜、楽しみにして下さってる方にはホント申し訳ありません(汗)