「何事ですか…これ?」

雨は上がってもそう簡単に気分は変わらない。
それでも同居人である二人が心配していると思い憂鬱な気分を引き摺りながら部屋から出てきた八戒が見た物は…居間中に吊るされているてるてる坊主の大群だった。

部屋の隅から隅へ向けて洗濯ロープが引いてあり、そのロープには小さなてるてる坊主がいっぱいぶら下がっている。
しかも全てにマジックで顔が書いてあった。
そんな中、テーブルでうつぶせになって眠っている悟浄とアイロン台の上で同じようにうつぶせになって眠っているを見つけた。
居間中のてるてる坊主を眺めていると、悟浄が大きなあくびと共に目を覚ました。

「よぉ…ビビったか?」

「もちろんですよ。それで…何のおまじないですか?これは…」

「雨が早く止みますように…だってさ。」

「え?」

悟浄は机に置いてある見本と思われし、てるてる坊主を手に取ると八戒の前で左右に揺らして見せた。

「『雨が止めば八戒は元気になるでしょ』
…って言ってチャンが一生懸命作った。オレは少し手伝ったダケ。」

「……」

「『八戒の辛さは知っているけど、頭で分かっているだけで心では分からないからどうする事も出来ない。今自分に出来る事は早く雨が上がるよう何とかする事だ』
…何てカワイー事言ってたゼ。」

「……」

八戒は何も言わずにアイロン台の所で眠っているの元へ進んで行った。
少し大きめのアイロン台の上で両手を組んでその上に頭を置いて休んでいるの側に、小さな籠に入ったてるてる坊主があった。



それは大きさもまちまちな4つのてるてる坊主で、

一つは大きな目と大きな口が特徴。

一つはタレ目と額にある赤い点。

一つは触覚の様にのびているヒモ。

…そしてもう一つはにっこり微笑んで眼鏡をかけているてるてる坊主…。



「こんなのも作ってたのか!?チャンって実はすっげー器用なんじゃねぇの?」

「…そう…ですね。」

「…ナニ?もしかしてカンドーしちゃった?」

「…御想像にお任せします。悟浄、てるてる坊主を作った見本見せて下さい。」

手に持っていた見本を八戒に渡すと、の側に置いてあった材料を手にテーブルについた。

「もしかしてオマエも作るのかよ!!」

「えぇ、1つ足りないものがあるじゃないですか。」

あっという間に小さなてるてる坊主を作りだし、それに手を加え始めた。
初めはそれを不思議そうに眺めていた悟浄だったが、やがてそれが姿を現し始めると納得した様に手を打った。

「…なるほどね。そーゆーコト。」

「こういう事です。」

そう言って八戒が4つのてるてる坊主が入っている小さな籠に入れたのは、他の物より一回り小さなてるてる坊主。
にっこり笑顔のてるてる坊主の首には他の物とは区別する様に可愛いピンクのリボンが巻きつけられている。

が起きたらお礼を言わないといけませんね。」

「その前にメシ…食っとけよ。チャンがいつでも食べれる様にって台所に用意してたぜ。」

「…至れり尽せりですね。」

チャン昨日からずーっとオマエの心配してたぞ。」

手にしていた長いタバコを灰皿へ押し付けると、新しい煙草を取り出し再び火をつけた。

「おや?ヤキモチですか?男の嫉妬は見苦しいですよ。」

「バーカ…そんなんじゃねぇよ。」

「今日の所はそう思っておきましょうか。」





次にあたしが目を覚ました時には、居間に吊るしてあったてるてる坊主達はお役御免になっていた。
その代わりテーブルの上に置いてある小さな籠には5つのてるてる坊主が仲良く並んでいた。





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本当はてるてる坊主のイラストを使いたかったこの話(笑)
可愛くないですか!?てるてる坊主版三蔵一行(大爆笑)

これ書いたのって多分去年だと思うんですよ。
やっぱり雨の日にぼーっと外を眺めていて思いついた・・・様な記憶が微かにあります(おいおい)
アイロン台でうたた寝しているヒロインは、一旦現代に戻って再びやって来た状態です。
決して桃源郷で寝ちゃったのではありませんのであしからず(でも妙に言い訳気味(苦笑))