「ん〜・・・これもいい香りだし、こっちのも飲んでみたいし・・・」
「気になるお茶があれば試飲も出来るみたいですよ?」
「え?ホント?」
「えぇ、ここに書いてあります。」
そう言って茶葉の見本の横に置かれている可愛いボードを八戒が指差したけど・・・相変わらず文字は読めない。
「何種類でもいいのかな?」
「そんなに飲んだらお腹いっぱいになっちゃいませんか?」
「・・・確かに。」
「気になっているのはどれですか?」
「んーっと・・・このサクラってのとマスカット、かな?」
「じゃぁそれを飲み比べてみて、気に入った方を今日は買う・・・というのは如何ですか?」
「うん!」
さすが八戒!ナイスアイディア!!
「すみません。こちらの・・・」
すぐに八戒が店員さんに声をかけて、あたしが気になってた2種類の紅茶の試飲をお願いしてくれた。
その間もあたしの視線は小さな店内を隅から隅まで眺めるようさ迷う。
八戒が連れて来てくれたのは、紅茶専門店のお店『花鈴』
つい最近、町に出来たばかりだというお店だけど、既に八戒は店の人と顔馴染みになっていた。
この辺は悟浄とは別の意味で、さすが八戒・・・というべきだろう。
店内はカントリー調で統一されていて、木の温もりが感じられる。
店員さんの制服もミルキーウェイとは少し違うタイプだけど、エプロンがふわふわしていて凄く可愛い。
それに紅茶専門店って言ってるだけあって、今まで町でお目にかかった事がないような茶葉も沢山店頭に並んでいる。
あまりに沢山の種類があって目移りしながらも、缶に入った茶葉の香りを楽しもうと端からひとつひとつ開けていたら・・・八戒だけでなく、店員さんにまで笑われてしまった。
「まず先にサクラだそうです。」
「あ、ありがとう。」
中国茶器のような器に入った紅茶を受取ると、飲む前に桜の花っぽい香りが自然と香ってくる。
「うわ、香り凄い。」
「味も中々のものですよ。」
「ホント?」
ワクワクしながらひと口飲む。
うわぁ・・・凄い、美味しい!
久し振りに美味しい紅茶飲んだって気がする。
「美味しい〜♪」
あたしも何とか人並みに紅茶を入れられるようになったと思ってるけど、時折失敗するもんね。
こんな風にいつでもすぐに美味しい紅茶が入れられるようになりたいんだけど・・・それにはやっぱり練習するしかないんだろうなぁ。
飲み干してしまったカップをじっと見つめながらそんな事を考えていたら、不意に八戒の小さな声が耳に届いた。
「がいれてくれる紅茶も負けないくらい美味しいですよ。」
「え!?」
「はい、次はマスカットです。」
「・・・え?あ、・・・うん?」
何か今、凄く照れるような台詞聞いた気がするんだけど・・・気のせい?
チラリと視線を八戒に向けるけど、当の本人は何もなかったかのように次の紅茶の香りを確かめてる。
「こちらは先程のものに比べると香りが爽やかですね。」
「本当だ。これ、基本は・・・ダージリン、かな?」
紅茶の茶葉が分かる訳じゃないけど、あたしが一番飲みやすいって思えるのがダージリンだから多分そうだろう。
そう思いながら缶に貼られていたラベルを見たけど・・・よ、読めない。
「の味覚も大したものです。ダージリンを基本に香り付けしているそうですよ。」
代わりにラベルを見てくれた八戒が笑顔で頷いた。
当たったのが嬉しくて小さくガッツポーズをしてから一気に紅茶を飲み干す。
「ぷはぁ〜っ満足!!美味しかった。」
「で、どちらがのお気に召しましたか?」
「・・・」
――― え、選べと!?
香りだけじゃ選べないから試飲させて貰った。
で、試飲したらどっちも美味しくて更に選べなくなった。
「あぅ〜・・・」
「・・・余計悩ませちゃいましたね。」
八戒が苦笑とも取れる笑みを浮かべながら2つを見比べ、ぽんっと手を叩いた。
「、こちらのサクラは今の時期だけの限定品だそうですよ。」
「限定・・・」
「今の時期しか使えない葉を使っているそうなので、今月いっぱいで終了みたいです。」
「終了・・・」
「逆にマスカットは一年通しておいてある商品で、夏場にアイスティーにしても美味しいらしいですよ?」
にこにこ笑顔の八戒の後ろでは店員さんも優しい笑みを浮かべてあたしの様子を伺っている。
もー、そんな風に言われたらあたしがどっちを選ぶかって八戒分かってて言ってるでしょ。
「どちらにしますか?」
「・・・」
そんな八戒の思惑に乗るのが何となく悔しくて言い渋ってみる。
「・・・じゃぁ今日は止めますか?」
「やだっ!!」
・・・って、これじゃぁ言い渋った意味ないじゃんっ!
「それじゃぁ、どちらにしますか?」
くすくすと笑いながら、八戒はあたしの前に最後の選択とでも言うようにサクラとマスカットの缶を差し出した。
やっぱり八戒にはどうやっても敵わないや。
はぁ〜っと大きなため息をついてから、限定品でもあるサクラを指差した。
「分かりました。」
――― だからっ!期間限定とか、そういう言葉に弱いんだってばっ!!
マスカットの缶を置いて、改めてサクラを店員さんに注文するとまるで店員さんが待ってましたとでも言うように測り終えたサクラの茶葉を缶に移し変える所だった。
八戒だけじゃなくお店の人にまでバレバレなあたしの態度って・・・。
町に出来た新しい紅茶専門店『花鈴』
あたしと八戒の、新しいご贔屓の店になりそうな予感。
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こちらの店舗は、日下部聡宇サマのお店でございます。
大変遅くなりましたが、本日「うたた寝」の世界にお店をオープンする事が出来ました。
日下部サマ、お待たせしてしまって申し訳ありません。
紅茶専門店「花鈴」では、作品内でもあるとおり店内で紅茶の試飲が出来ます。
また、紅茶の葉を使ったお菓子(クッキーやケーキ)の販売も行っております。
味の方は、八戒の太鼓判が押されているようで、既に常連となっている様子。
内装の方は、温かな感じがするように・・・と思い、カントリー風にまとめさせて頂きました。
もういつの企画の話だよっ!と怒られちゃいそうですが、それでも放置しておく事が出来ず、ようやく一軒目のお店、オープンです(苦笑)
こんな店が近くにあったら八戒だけじゃなく私も通いますね★
ちなみに私が好きなのはマスカットとライチ、でもってダージリンが好きです♪
基本的にあっさりしていて飲みやすいタイプが好き。
苦手だなぁと思ったのはバレンタインの時期にあるチョコレート系のフレーバードティ。
・・・香りがものすっごい甘いのに、飲むと普通の紅茶ってのがギャップあって駄目みたい(笑)
「こんな甘い香りなのに、味は甘くないって何で!?」みたいな。
それでも種類によって色んな味や色を楽しませてくれる紅茶が大好きですw