カタンと音を立てて八戒の前に置かれた大きなパフェ。
自分の前にも同じようなパフェが置かれているのに、どうして違って見えるんだろう。

「どうしました?」

「あ、ううん・・・なんでもない。」

誤魔化すように自分の前に置いてある半分以上無くなったチョコレートパフェをスプーンですくって食べる。
それでも視線は八戒の前に置かれたイチゴパフェに釘付けだ。

「久し振りですね、パフェなんて。」

「・・・」

普段なら向かい合わせで会話するはずだけど、今は席の関係で隣同士に座っている。
パフェを食べる八戒なんて初めてみるなぁって思いながら、横目でその様子を伺っているとそれに気づいた八戒がくすりと笑った。

「僕の顔になにかついていますか?」

「・・・っ!ううん、なっ何にもついてないっ!」

大げさとも思えるほど首を左右に振って視線を正面に戻すと、ガラスに映った八戒が優しい笑みを浮かべながらパフェをひとくち食べていた。
その光景に見惚れてしまってスプーンをくわえたままガラス越しに八戒を眺めていると、顔を上げた八戒と目が合った。

「っ!!」

「仕方ありませんね。」

嬉しいような困ったような表情の八戒が大きめのイチゴとアイスをスプーンに乗せると、あたしの方へ差し出した。

「・・・?」

「ひとくち如何ですか?」

「・・・え?」

「味見、したいんじゃないんですか?ここのイチゴパフェはまだ食べた事がないでしょう?」

「あ、えっと・・・うん。」

「じゃぁどうぞ。」

はい、といって更に口元に向けられるスプーン。
その向こうにはガラス越しではなく、まっすぐ自分を見つめてくれている八戒。



――― 妙に照れるのは何故!?



シチュエーションに動揺して内心おろおろしていると、八戒が少し困ったように眉間に皺を寄せてスプーンを指差した。

「ほらほら早くしないとアイスが溶けちゃいますよ?」

「あっ!」

そう言われて反射的に口を開ければ、八戒が笑顔でパフェを口に入れてくれた。

「・・・美味しい!」

「良かったですね。」

「イチゴすっごく甘くて美味しい!!うわぁっあたしもイチゴパフェにすればよかった!!」

「別々の物を頼んだからこうして色んな味が楽しめるんですよ。」

さっきあたしの口にパフェを運んだスプーンは、今度はキチンと八戒の口元へと運ばれた。



――― か、間接キスじゃん!



なーんて事に動揺するのはあたしだけで、八戒は真っ赤になっているあたしを見て少し心配そうな顔をしていた。

「窓辺の席だから少し逆上せちゃいましたか?」

「いや、その・・・」

「もう少し食べますか?」

アイスクリームの部分だけをすくってあたしの方へ差し出してくれたスプーンを断る事も出来ず、もう一度口を開けて食べさせて貰う。

「いつもが美味しそうに食べてるので、僕も食べてみたくなったんですよ・・・パフェ。」

「そうだったんだ・・・珍しいなぁって思ったんだ。八戒がパフェ頼むのなんて。」

「あはは、そうですよね。でもやっぱり・・・」

「ん?」

「パフェが美味しいんじゃなくて、こうしてと食べるという行為自体が・・・美味しくさせてるんだって分かりましたよ。」

そう言って再びパフェをすくってあたしの前に差し出す八戒。

「はい、どうぞ。」

そんな風に優しい笑みを浮かべ、甘い声で言われて断れるわけがない。

「・・・」

持っていたスプーンを器の中に置いて、体を八戒の方へ向けて口を開ける。





アイスクリームが溶けるのが早いのは、窓辺から差し込む日差しの所為だけじゃない・・・はず。





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もともとは三周年記念のキャラ投票で一位になった八戒を祝い、フリー配布していたものです。
あ〜らら、ついに通常公開になりましたよ(笑)

こちら、実はゼロサムの応募者全員サービスのテレカのイラストを元に書いています(笑)
限定公開している時から、全員揃ったら通常公開に…と言っていましたが、最後まで全員揃わなかったのですが、出来ている分は通常に回そう!と決めたので持ってきました。
テレカをお持ちでない方は、塩犬4でパフェを差し出してくれている八戒がおりますので、そちらをみながら楽しんで頂くとよいかと思われます。
短いけれど、八戒らしさが出ているのではないか…と思っている作品です。

※ 既にフリー配布は終了しているので、お持ち帰り不可ですよー ※