「、ちょっと顔色悪くないですか?」
「え?そ、そう?」
・・・やばい、八戒にはばれる気がする。
「今朝はあまり食欲も無いようですし・・・もしかして具合でも悪いですか?」
「いや、その・・・えっと向こうで寝る前にお夜食食べたからお腹いっぱいで・・・」
しどろもどろ言葉をつむぐあたしを見て、八戒は手を口元に当てて暫く何かを考えた様子だったけどやがてポンッと手を叩くと如何にも今思い出したという風にある事を言い出した。
「に必要かどうか分からなかったんですが、もし必要だったらお手洗いの上の棚にあるもの自由に使ってもらって構いませんから。」
「ほぇ?な、何の事!?」
「必要だったら・・・の話ですよ。さて、それじゃぁ僕はちょっと台所でやる事があるのではのんびりしていて下さいね。」
そう言うと笑顔のまま八戒はあたしが残してしまった朝食を持って台所へと消えていった。
・・・やっぱり八戒気づいてる?あたしが生理になったって事・・・。
取り敢えず痛むお腹を押さえて八戒が言っていた必要なら使ってくださいと言っていた物の正体を確認しにお手洗いへ向かった。
背伸びをして上の棚へ手を伸ばして小さな戸を開けると・・・そこには男性二人暮しの家にはありえないはずの物が茶色い紙袋に入っておいてあった。
「・・・やっぱ気づいてる。」
それを手にしてがっくり肩を落とし、鋭い勘の持ち主である同居人の名前を呟いた。
「さすが八戒、準備よすぎ。」
苦笑しながらもそれが必要物資だと言うのには代わりが無いので、ありがたく使わせてもらいそれを元あった所に戻して部屋に戻ると、朝起きた時には無かった毛布がベッドの上に置いてあった。
「・・・?」
それを手にして首を捻っていると、部屋の扉が開く音がしたのでくるりと振り返った。
「八戒・・・」
「他に何か必要な物はありますか?」
いつもと変わらぬ笑顔で微笑んでいる八戒がそっとあたしの手を握った。
「やはり少し冷えているみたいですね。何か温かい物でも飲みますか?」
「八戒、いつ気づいたの?あたしが・・・その・・・」
はっきり言う事が出来ず八戒の手を軽く握り返すと、それに気づいた八戒があたしの頭を撫でながら教えてくれた。
「そうですね・・・今朝起こしに来た時、いつもの元気がないなぁと思ったのが最初で、朝食の時触れた手がいつもより冷たかった事で確信しました。」
「そうなんだ・・・」
気をつけていなければ気づかないそんな小さな事に八戒は気づいてくれたんだ。
「やはりこう言う事はあまり大げさにしない方がいいかと思ったんですが・・・は、その・・・結構重い方なんですか?」
じっと目を見つめられたら・・・もう誤魔化せないよね。
小さくため息をつくとあたしはコクンと頷いた。
「八戒が言ったみたいに生理の時は食欲が無いし、体温も凄く下がっちゃうみたい。だから大抵寝てる事が多いなぁ・・・。」
「起きてると辛くないですか?」
「ん、今は平気。でもちょっと腰痛いから・・・横になってもいいかな?」
「えぇ、どうぞ。」
すぐに八戒がベッドを整えてくれてあたしが横になると、お腹に毛布をかけてくれてその上から布団をかけてくれた。
「何か温かい物を持ってきましょうか?」
「うん・・・ごめんね、迷惑かけて・・・」
悟浄と八戒の二人だけだったらこんな迷惑な事起きなかったのに、あたしが調子に乗ってここにいるから余計な迷惑かけちゃってるんだよね。
「女性の体は繊細ですからね、労わるのは当たり前です。それにに関する事で迷惑だと思う事は今までも一切ありませんよ。・・・すぐ戻ります。」
まるであやすかのように軽く頭を撫でて八戒が部屋を出て行くと同時に一気にお腹に痛みが走った。
くぅ〜生理痛、波があるから平気な時は喋ってられるけど酷い時は喋れないんだよね。
ちょうど八戒が出て行ったのはラッキーな事かもしれない。
「お待たせしました・・・!?」
「あ、お帰り・・・八戒。」
声を聞いて体を起こすと八戒がやけに慌てた様子で手に持っていたお盆を側の机に置いてあたしの頬を両手で包んだ。
「顔、真っ青じゃないですか。それにこんなに冷たくなって・・・」
「あーいつもの事だから・・・痛みにムラがあって時々こんな風になっちゃうの。」
「・・・今はどうなんですか?」
「今は・・・っっ!」
急激に訪れる何とも言えないお腹と腰の痛み。
両手でお腹を抱え込んで背中を丸め、唇を噛み締めながらその痛みに耐える。
よ、よりによって八戒にこんな醜態を晒してしまうなんて・・・。
それでも痛みは遠ざからなくて、せめて八戒にこの苦痛に耐える変な顔を見せないよう背中を向けると不意に腰に暖かなものを感じた。
まるでそこに太陽が当たっているかのような温かさ。
「・・・少しは楽になりますか?」
「え?」
首だけ振り向くと八戒が両手に気を集めてそれを布団越しに腰の部分に当ててくれているのが見えた。
「温めた方が楽なんですよね。」
「う、うん。」
「それじゃぁ落ち着くまで暫くこうしてますから・・・」
「でもそれじゃぁ八戒が疲れちゃうよ!」
慌てて起き上がろうとしたけどそれを八戒にやんわり止められた。
「貴女一人が苦痛に耐えてるのをただ見ている訳にはいきません。僕がこうする事で少しでもが楽になるなら・・・遠慮せず甘えてください。」
額に汗をにじませながらもいつもと同じ笑顔を向けてくれる八戒の思いが嬉しくて、それを断るなんて事も出来なくて・・・八戒の言葉に甘えて暫く気功を背中に当ててもらった。
「お味はいかがですか?」
「おいしい!八戒!!」
それから暫くして腰の痛みが引いたあたしは、八戒が持ってきてくれたスープを勢い良く飲むほどに回復していた。
ちなみにそのスープは今朝あたしが残してしまった朝食をアレンジした物らしいんだけど・・・どうやったらあのメニューがこんな美味しいスープに化けるのか分からない。さすが八戒、と言う所かな?
「少し元気出ましたか?」
「うん!八戒が色々気遣ってくれたから、大分良くなったみたい。」
八戒の気功の影響も多大にあると思うんだよね。
だってさっきまで感じていたお腹の痛みが全然なくなったもん。
「良かったですね。お代りはいかがですか?」
「・・・も、もらってもいい?」
微かに空腹を訴えるお腹を満たすべく空になったお皿を八戒に差し出す。
するとそれを受け取った八戒がちょっと意地悪そうな笑みを浮かべあたしの顔を覗き込んだ。
「おや?でもはお夜食を食べてお腹いっぱいだったんじゃないんですか?」
「うっ・・・い、今は朝だもん!!」
「そうですね、今は朝ですね。待っていて下さい、すぐに戻りますから。」
くすくす楽しそうに笑いながらお皿を持って八戒が部屋から出て行った。
窓から差し込む日差しが顔に当たって、それがさっき迄八戒が腰に当ててくれた気功の温かさに何処か似ている気がして自然と笑顔がこぼれる。
まさか桃源郷に来てこんな事になるなんて思わなかったけど、八戒の気遣いが今は嬉しいから・・・今日はこのまま甘えさせてもらってもいいかな、八戒?
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NO:13祐理サンの『腹痛(生理痛??<思い切って書いてすみません。)のヒロインを気遣ってくれる優しい八戒さんの話』と言う事で、まったくもってそのまんま(苦笑)
私も結構ひどい方なので、最悪状態の時は家の中を布団に包ったまま移動してます(笑)
女性にしか分からない痛みですよね、ホント。
これより軽い人、重い人、人の数だけ種類があると思いますが、今の所は八戒に甘えて毎月の痛みを乗り越えましょう!!
・・・こ、こんなのでお星様は願いを叶えた気分になってもいいのだろうか(汗)