「あははっ久し振りのボーリング楽しかった〜♪」

「誰かさんのおかげでガーターの溝も綺麗になったしな。」

「むーっ・・・そんな事言う口はどの口!」

高耶より頭ひとつ低い彼女が精一杯背伸びをして、高耶の頬を掴むと思い切り引っ張った。

「痛っ、何しやがる!」

「今のは高耶が悪いよ。さん、最後の方にはちゃんとストライクだしてたじゃないか。」

「成田くんはいい子だねぇ〜・・・それに比べて高耶はーっ!!」

ひてててっ・・・

「あははははっっ!」

店先でそんな事をしていたら、外から入る車にクラクションを鳴らされて慌てて脇によけた。
その時、不意に店に入る時計をさんが見て声をあげた。

「・・・あ、そろそろ時間。」

「何だよ。もう?」

「うん。」

「え?さん、この後用事あるんですか?」

てっきりこの後、俺達と一緒に食事に行くと思っていたのに、彼女は携帯電話を取り出すとメールを打ち始めた。
隣にいた高耶が、つまらなそうな顔でこう呟いた。

「千秋とデートだとさ。」

「千秋と?」

「うん!本当は午前中からだったのに、千秋ってば急な用事とかで急遽時間変更したの。」

「・・・へぇ。」

「ンで、たまたま通りかかったオレ達が暇つぶしの材料にされたってワケだよな。」

「奢ってあげたでしょ?」

「缶ジュース一本な。」

普段はあまり人に関わらない高耶が、さんとは珍しく楽しそうに話してる。
あぁでも何となくその気持ち、分かる気がするな。
高耶が声掛けて、ホンの2ゲーム一緒に遊んだだけなのに・・・俺、凄く楽しかった。

そんな風に物思いに耽っていたら、不意に腕を掴まれて視線を向ける。

「え?」

「成田くんにならご飯くらい奢ってあげてもいいわよ?」

「てめぇ!」

「ちょっ、落ち着きなよ高耶。」

「煩ぇ!譲!ソイツこっちよこせ!」

「きゃーっ」

楽しそうに笑いながら俺の背後に隠れたさん。
高耶が手を伸ばそうとすると、俺を盾のように動かしてその手から逃げる。

「譲!そんな馬鹿匿ってんじゃねぇよ!」

「匿ってるわけじゃ・・・」

「あははっ高耶怖ぃ〜♪」

そんな風にじゃれあっている所へ、車のクラクションの音が鳴り響いた。
一斉に顔をあげて音のした方へ視線を向けると、サングラスをかけた千秋が不機嫌そうに俺達を見ていた。

「・・・あ、もう来た。」

「早ぇな。」

パッと俺を掴んでいた手が離れる。

「暇つぶしに付き合ってくれてありがとうね、高耶。成田くんも折角高耶と遊んでたのに邪魔してゴメン。」

「別に・・・」
「そんな事ありません!」

高耶の言葉を遮って、一歩前に踏み出す。

「俺、凄く楽しかったです。」

「あたしも楽しかったよ。」



室内じゃ暗くて良く見えなかったけど、太陽の下で笑うさんは・・・凄く、綺麗だ。



「あの、今度メールしてもいいですか?」

「え?」

「別に大した意味はないんですけど・・・」

「・・・譲?」

俺が突然そんな事を言い出したのを一番驚いたのは、隣にいた高耶だった。

「あ、でも嫌なら・・・」

「ううん、いいよ。」

「本当ですか?」

「返信遅くても怒らないなら。」

「高耶より遅いって事はないでしょう?」

「・・・人を引き合いにだすなよ。」

「あはは、うん。高耶よりは早いよ。」

「おい!!!」

「あ、はーい!」

話をしている最中でも、千秋の声に即座に反応する彼女。

「これ以上待たせると千秋が怒るから、あたし行くね。高耶、成田くんにあたしのメルアド教えてあげて。」

「あぁ。」

「じゃぁ二人とも、またね!!」

そう言うと今度はこちらを振り返らずに、まっすぐ千秋の所へ駆け出していった。
ひと言ふた言会話を交わすと千秋がさんの頭を軽く小突き、そのまま彼女の手を取ると、助手席の扉を開けて中へ乗せた。
すぐに車の窓が開いて、中からさんが手を振ってくれてるので、俺も同じ様に手を振り返した。

「ばいばーい」

千秋の車が走り去る所なんて何度も見てるのに、この時はやけに・・・寂しく感じた。










いつまでも千秋の車を見送っていた俺の頭に、コツンと何かが当たった。

「ほらよ・・・アイツのメルアド。」

「あ、サンキュ。」

高耶が携帯電話を開いて、さんのアドレスを教えてくれた。
それを自分の携帯電話に入力して、登録する。





今まで女の人に興味なんてあんまりなかったけど、
今日始めて一緒に遊んだ彼女は、凄く好感が持てる相手だった。
高耶と一緒にいても邪魔にならない。
寧ろ、高耶と二人でいる時と同じくらい・・・気持ちが穏やかでいられた。

俺の携帯に新たに追加された彼女のアドレスは、高耶の次に登録された。





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まさか上杉夜叉衆以外の人間を書くことになるとは、全く思っていませんでした(苦笑)
これは15のお題、嫉妬の中でヒロインにメールを送ってくるというのがあったので「じゃぁどうやって彼らはメールアドレスを交換したのか」と言う疑問から出来た話です。
譲はある意味一番普通にメールアドレスを交換してますね。
ヒロインも多分譲は高耶とは違う意味で可愛がる・・・と思います。
・・・もし、今後も譲の話を書こうと思えば、の話ですよ?(汗)
ボーリングで溝を掃除するのが得意なのは私です(笑)
2ゲームやればどっちかが成績良くて(でもスコア100もいかない)途中で指が疲れます(笑)
しかも投げ方がヘンなので、高耶とボーリングには行きたくありません(笑われるのが目に見えるから)
さてさて、高耶の次に登録されたメールアドレス・・・この後、譲はどうするんでしょうねぇ?(まるで他人事)