「お前さん、何してるんだ?」
「あ、金やん…って、ちゃんと着ないと風邪ひくよ!?」
「へいへい…随分口うるさくなったなぁ」
「金やん風邪ひいたら…大変だもの」
部屋に入り、言われたとおりパジャマの上を羽織ってベランダへやって来た金やんにポツリ呟く。
「看病が、か?」
「違うもん…」
――― 金やん風邪ひいたら…元気ない金やんを見ているの、辛いもの
なんてこと、口に出来るわけもなく、もごもご言葉を濁す。
「ま、俺よりもお前さんの方が心配だな」
その言葉とほぼ同時に、椅子にかけてあったショールが肩へかけられた。
「冷えるぞ」
「…ありがとう」
「んで、何をしてたかそろそろ教えて貰えるか?」
ショールごと抱きしめるよう、背後から抱えられ頭上から声が降り注ぐ。
「流星探してた」
「流星…?」
「あのね、今日オリオン座流星群が見える日なんだって」
「ほほぉー」
「で、さっきまでは雲かかってたんだけど、今雲が晴れて、ほら…オリオン座見えるでしょ?」
背中に金やんを背負ったまま、ほんの少し前に身を乗り出して斜め上を見る。
「あれとー、建物で見えないけどあっち側にあるふたご座の間が放射点…で?そっから流れる…らしい?」
「らしいって…」
「だって方角わかんないんだもんっ!!」
「いばることか〜?」
「でも、オリオン座はわかるもん!あれだもん!」
ほら!と言うように、指差した方向には、唯一わかる星座が輝いている。
「で、無事流星は見れたのか?」
「………う゛」
「やれやれ…で、このまま頑張るつもりか」
「ううん、金やんお風呂上がるまでって思ってたから」
「そうか…」
「また次に期待して、寝る」
最後にもう一度、少し身を乗り出して空を見あげる。
確か、今日見えてるのはずっとずーーーっと昔のハレー彗星の塵とかだって書いてあった。
そんな昔のが、今見えるってなんか凄い不思議だ。
「おいおい、あんまり身を乗り出して落ちなさんな」
「落ちないよ〜」
「どーだか」
「む〜〜」
「…ぶしゅっ!」
何か言おうと振り向いた瞬間、でっかいくしゃみ。
「ほらーっ!ちゃんと上着着てないから!」
「やっぱ随分寒くなって来たな」
「ちっがーう!お風呂上りに、ボタンも留めずにベランダでてくるからです!」
肩にかけていたショールを、背の高い金やんの肩に引っ掛けるようにして預け、その背をぐいぐい押して歩かせる。
「早くベッドに入って、温かくしてください!」
「へいへい」
面白そうに笑ってる金やんの後に続いて、部屋に上がる。
カーテンを閉める前に、もう一度空を見上げて、心の中で呟いた。
――― また、会おうね
「おーい」
「は、はーい!」
次にもし、流星がやってくるなら…金やんと一緒に見れるといいのにな。
そんなことを思いながら、眠った夜に見た夢は…満天の星空の下、金やんだけじゃなくハナさんたちも一緒に、皆で天体観測をする夢だった。
お風呂から上がったら部屋にいなくて、パジャマ着るのもそこそこに探してくれる金やんって可愛いよね。
書いたのは随分前で、置き場がなくて困っていたのでここへ持って来てみた。
2010/09/28